法律相談の前に用意する資料チェックリスト|手元に何もない場合はどうするか
弁護士に相談へ行くとき、一人で向かうのは心細いと感じる方は少なくありません。家族に付き添ってほしい、事情をよく知る知人にも一緒に聞いてもらいたい、というご希望はよくあります。
結論から言えば、家族や知人の同席を受け入れている法律事務所は多くあります。ただし、同席は「付き添ってもらうかどうか」だけの問題ではありません。同席は、相談の内容をその人にも共有すると決める行為でもあります。共有する範囲が変われば話せる事実が変わり、話せる事実が変われば、弁護士から返ってくる見通しも変わります。
この記事では、同席できるかどうかそのものよりも、同席が相談の中身と、その後の手続に何を与えるのかを整理します。
同席できる場合は多いが、「誰の相談か」は変わらない
多くの事務所が同席を受け入れている
法律相談に家族や知人が同席することを、法律が禁じているわけではありません。実際、よくある質問のページで「第三者の同席も可能です」と案内している事務所は少なくありません。相談者が「家族に聞かれてもかまわない」と考えているのであれば、事務所側から止める理由は基本的にありません。
もっとも、部屋の広さや人数の都合で人数を制限することはありますし、事案の内容によっては形を調整することもあります。まずは予約の段階で伝えておくと行き違いがありません。
相談の主体は本人のまま
同席が認められても、相談の主体が同席者に移るわけではありません。弁護士が確認したいのは、本人が何を経験し、本人が何を望んでいるかです。弁護士の職務のルールにも、委任の趣旨についての依頼者の意思を尊重して職務を行うという定めがあります。
付き添いの方が説明の中心になっても、弁護士はどこかの時点で本人に向き直り、同じことを本人の言葉で尋ねます。同席者を疑っているのではなく、後の手続で意味を持つのが本人の意思だからです。
誰を同席させるか、どこまで聞かせるかを決めるのも本人です。家族から「自分も一緒に行く」と言われて断りにくい場面はあると思いますが、同席の範囲は本人の判断で調整できます。後で述べるとおり、途中から外れてもらう形も取れます。
同席には4つの型がある
同席は「する」か「しない」かの二択ではありません。実際には次のような幅があり、どれを選ぶかで得られるものが変わります。
| 型 | 向いている場面 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 最初から最後まで同席 | 経緯を家族の方がよく把握している/相談後の手続を一緒に進める | 本人が話しにくい事実が出にくくなることがある |
| 一部だけ同席 | 事実の確認は本人だけで行い、費用や今後の段取りは一緒に聞く | どこで区切るかを事前に決めておく必要がある |
| 別室で待つ・送迎のみ | 精神的な支えは必要だが、内容は共有したくない | 待ち時間の見込みを伝えておく |
| 本人が行かず、家族などが相談 | 本人が病気や高齢などで来所できない | 窓口によって可否が分かれ、その場で依頼まで進みにくい |
どれが優れているというものではなく、何を優先したいかで選ぶものです。多くの場合、「一部だけ同席」が現実的な落としどころになります。
同席が助けになる場面
事実と段取りの両方が補われる
同席が相談の質を上げる場面は確かにあります。代表的なのは次のような状況です。
- 出来事の時期や金額について本人の記憶があいまいで、家族の方が経緯を把握している
- 移動や体調、聞き取りなどの面で支えが必要である
- 費用の負担や生活の立て直しを、家族と一緒に決める必要がある
- 相談後の書類集めや連絡を家族が手伝うことになる
- 一人では気力が出ず、相談そのものに踏み出せない
法律相談は短時間で多くの情報が行き交います。緊張していると、聞いたはずのことが後から思い出せないことも珍しくありません。同席者がいれば、聞き漏らしを補い合えます。
手続を実際に動かす人が同じ場にいる意味
相談で方針が決まっても、実行するのは日常生活の中です。通帳の写しを取り寄せる、期限までに書面を出すといった作業を家族が担うのであれば、その方が同じ説明を直接聞いている効果は小さくありません。伝言を経ると、条件や期限が落ちてしまうことがあります。
同席によって相談の中身が変わることがある
ここからが、同席を考えるうえで見落とされやすい部分です。
話せなくなる事実が出てくる
弁護士が見通しを立てるには、本人にとって不利に見える事実こそ必要になります。ところが、家族や知人が同席していると、次のような事実が出てこなくなることがあります。
- お金の使い道や、家族に伝えていない借入・滞納
- 異性関係や、家庭内で説明していない交友関係
- すでに署名した書面や、相手に渡した金銭
- 暴力、依存、体調に関わること
- 自分の側の落ち度だと感じている出来事
これらは、相談の結論を大きく左右することが多い事実です。伏せたまま相談を進めると、弁護士は限られた材料で見通しを述べることになり、後から前提が変わって方針を組み直す、という流れになりやすくなります。
本人の希望が見えにくくなる
同席者が善意で「本人はこうしたいと言っています」と説明する場面はよくあります。ただ、本人の考えと家族の考えが完全に同じとは限りません。とくに、離婚するかどうか、示談に応じるかどうかといった判断は、周囲の希望が強く出るほど本人の本音が出にくくなります。
弁護士が本人に直接尋ね直すのは、この差を確認するためです。
見通しは「聞けた事実」の範囲でしか立たない
弁護士の見立ては、材料の量と正確さに左右されます。同席によって材料が減れば、見通しの精度もその分だけ下がります。同席をどうするかは、支えを得ることと、材料をそろえることのどちらを優先するかという選択でもあります。
同席した人に守秘義務はない
守秘義務を負うのは弁護士の側
弁護士は、職務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならないという義務を負います。これは受任に至らなかった相談にも及びます。ただし、この義務が向けられているのは弁護士とその事務所の側であって、同席した家族や知人ではありません。
相談内容についての証言拒絶権もない
訴訟になったとき、弁護士には職務上の秘密について証言を拒める場面があります。一方、同席した家族や知人には、相談内容全般について証言を拒める仕組みはありません。近親者について限られた範囲で証言を拒める規定はありますが、相談で聞いた内容をひととおり守れるようなものではありません。
つまり、その人が将来、証人として尋問を受ける立場になる可能性は残ります。相手方や家庭内で対立が生じている事案では、この点は軽くありません。
悪意がなくても情報は動く
同席者が意図的に言いふらす、という話ではありません。心配のあまり別の親族に相談する、良かれと思って相手方の家族に事情を説明する、といったことは起こります。同席をお願いするときは、どこまで外に出さないでほしいかをその場で伝えておくと、行き違いが減ります。
利害が対立するかもしれない人が同席する場合
「今は同じ側」でも、後から分かれることがある
同席者が単なる付き添いではなく、同じ問題の関係者であることがあります。例えば次のような組み合わせです。
- 借入の主債務者と、その保証人
- 同じ相続で、今は足並みがそろっている相続人同士
- 同じ出来事に関わったとされる複数の当事者
- 夫婦のどちらにも請求が向かい得る事案
相談の時点では利害が一致していても、誰がいくら負担するのか、誰が先に責任を問われるのかといった論点が出てくると、同じ側だったはずの二人の立場は変わります。
弁護士は受任前に不利益になり得ることを説明する
弁護士の職務のルールには、同一の事件について複数の依頼者があって相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、受任にあたって、それぞれに対し辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない、という定めがあります。
実際に対立が現実化した場合、弁護士は双方について辞任することになったり、一方の承諾を得たうえで一方のみ辞任し他方の受任を続けることになったりします。途中で弁護士が離れる可能性があるという点は、あらかじめ知っておく価値があります。
事務所によっては書面で確認する
こうした説明を書面にして承諾のサインを求める運用の事務所もあります。手続的に見えるかもしれませんが、後から双方が困らないようにするための手順です。
費用を出す人が同席する場合
費用を負担する人と依頼者は別
親が子の費用を負担する、配偶者が費用を出す、といった形はよくあります。ここで整理しておきたいのは、費用を負担することと、依頼者になることは別だという点です。
弁護士は、事件の受任と処理にあたって自由かつ独立の立場を保つように努めることとされ、また委任の趣旨についての依頼者の意思を尊重するものとされています。費用の出どころによって、方針を決める人が入れ替わるわけではありません。
報告の宛先を最初に決めておく
実務で行き違いが起きやすいのは、進捗の連絡です。費用を出している家族が「自分にも報告してほしい」と考える一方、本人は「自分にだけ連絡してほしい」と考えていることがあります。
- 連絡や書面の宛先を誰にするか
- 本人不在時に、家族へどこまで答えてよいか
- 請求書の宛名と支払方法をどうするか
この三点は、最初の相談か契約のときに決めておくと、後の負担が軽くなります。
方針が食い違ったとき
本人は示談で終わらせたい、費用を出す家族は争うべきだ、という食い違いは起こり得ます。この場合、弁護士は本人の意思を確認しながら進めます。費用を出した側からすると納得しにくい場面ですが、効力が及ぶのは本人の判断である以上、避けにくい構造です。
本人が相談に行けないとき
代わりに相談できるかは窓口によって異なる
本人が病気や高齢などの事情で来所できず、家族だけが相談に行く形を「代理相談」と呼ぶことがあります。可否も条件も窓口ごとに違います。
| 窓口 | 代理相談の扱いの例 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 法テラスの無料法律相談 | 疾病、高齢、障がい等のやむを得ない事情がある場合に、代理の方の相談を認める案内が出ている。多忙などは該当しないとされている | 本人の相談意思を口頭で確認する運びになるため事前連絡が要る。意思表示が難しい場合は委任状を求められる |
| 弁護士会の法律相談センター | 原則は本人からの相談。体調等で来所できない場合に相談を受けるという案内の例がある | その場で事件の依頼までは進めない、と案内されていることがある |
| 法律事務所 | 可否も範囲も事務所ごとに異なる。家族は受けるが友人は受けないという運用もある | 予約時に、本人との関係と、来所できない理由を伝える |
自治体の窓口では、委任状の提出を求める運用もあります。いずれにしても、事前に電話で確認してから向かうのが無駄がありません。
代理の相談で得られるのは、一般的な整理にとどまりやすい
代理相談が認められても、返ってくる答えの性質は変わります。本人でなければ分からない事情が多く、家族が「重要ではない」と考えて省いた事実が結論を左右することもあるためです。方針を絞り込むところまでは進みにくい、と考えておくほうが現実的です。
依頼の段階では本人の意思確認が入る
相談と依頼は別の段階です。家族が相談に行き、そのまま依頼へ進むという流れにはなりにくく、多くの場合は弁護士が本人と会うか連絡を取り、依頼する意思を確認したうえで契約に進みます。本人に依頼する意思がなければ、家族の希望だけで進めることはできません。
本人だけ別の方法で加わる
来所が難しいだけであれば、家族が事務所に出向き、本人はオンラインや電話でつながる形を取れることがあります。本人が短時間でも直接話せると、相談の中身は変わります。この方法が使えるかどうかも予約時に確認しておくとよいでしょう。
未成年の方、判断能力に不安がある方の場合
未成年の方は保護者の関与が前提になる
未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意が必要です。訴訟についても、原則として法定代理人によることになります。相談だけであれば本人だけで受けられる場合もありますが、依頼に進む段階では保護者の関与が避けられないのが通常です。学校や家庭のことで保護者に知られたくないという事情がある場合は、その点も含めて早めに伝えたほうが、対応の幅を考えやすくなります。
判断能力に不安がある場合
高齢や病気により、本人が自分の意思を十分に表明しにくいことがあります。弁護士の職務のルールには、依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に表明できないときは、適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に努める、という定めがあります。家族の説明だけで進めるのではなく、本人に確かめる時間を取ることになります。
本人と二人だけで話す時間を取ることがある
同席者がいる相談でも、弁護士が「少しだけご本人と二人でお話しさせてください」と求めることがあります。同席者を疑っているのではなく、本人の意思を周囲の影響から離れた状態で確かめるための手順です。求められたら応じておくほうが、後の進行がなめらかになります。
同席を決める前に確認しておきたいこと
同席する形で相談する場合、次の点を先に決めておくと、その場で迷わずに済みます。
- 予約のときに、同席者の有無・人数・本人との関係を伝える
- どこまで聞かせるかを、自分の中で先に決めておく
- 席を外してもらうときの合図や言い方を決めておく
- メモや録音をどう扱うかを、事務所と同席者の双方に確認する
- 同席者に守秘義務がないことを、同席者本人にも共有しておく
「ここからは一人で話したい」と言ってよい
相談の途中で「この部分は一人で話したい」と伝えることに遠慮は要りません。弁護士の側から席の外し方を提案することもあります。事前に同席者へ「途中で外してもらうかもしれない」と伝えておけば、その場で気まずくなりにくくなります。
オンライン相談の場合
オンラインで相談する場合は、画面に映っていない同席者がいるかどうかを最初に伝えておきます。弁護士は、誰が聞いているかを前提に話す内容を調整するためです。録画や録音の扱いも始める前に確認しておくとよいでしょう。周囲に人がいる環境からつなぐと本人が話せる範囲が狭まる点は、来所の場合と同じです。
相談のあと、手続にも同席してもらえるか
調停室には原則として入れない
法律相談への同席と、その後の手続への同席は別の話です。家庭裁判所の調停について、法テラスは、家族や友人などは特に必要があると調停委員会が判断した場合を除き調停室には入れず、待合室などで待つことになる、と案内しています。付き添いとして裁判所まで一緒に行くことと、調停室に入ることは別だということです。
裁判所の許可があれば補佐人として同席できる場合がある
民事訴訟法には、当事者や訴訟代理人が裁判所の許可を得て補佐人とともに出頭できるという定めがあり、家事事件の手続にも準用されています。補佐人の陳述は、当事者側が直ちに取り消したり訂正したりしなければ当事者が自ら述べたものとして扱われ、許可はいつでも取り消すことができるとされています。誰でも当然に入れる仕組みではないため、個別に必要がある場合は事前に裁判所へ確認することになります。
相手方との話し合いの場は別の問題
相手方と直接話し合う場に家族を同席させるかどうかも、別の判断になります。人数の差が相手を刺激する、感情的な対立が持ち込まれるといった影響が出やすいためです。事案ごとに弁護士と相談して決めるほうがよいでしょう。
よくある質問
同席を断られることはありますか
あります。人数や部屋の都合という物理的な理由のほか、同席者が相手方にあたる場合や利害が対立する可能性が高い場合に、別々に相談してほしいと案内されることがあります。理由は尋ねれば説明されますので、その場で確認してみてください。
途中で席を外してもらうことはできますか
できます。前半だけ同席してもらい、後半は本人だけで話すという進め方もよくあります。事前に事務所へ伝えておけば、待合スペースの案内も含めて段取りしてもらえます。
同席者の分の相談料はかかりますか
相談を一件として扱い、人数で料金が増えない運用が一般的です。ただし料金の考え方は事務所ごとに異なるため、予約時に確認しておくとよいでしょう。
家族ではなく友人でもよいですか
友人の同席を受け入れている事務所は多くあります。一方で、家族は受けるが友人は受けないという運用の事務所もあり、本人が来所せず友人だけが相談する形は慎重に扱われる傾向があります。関係性を伝えたうえで、事前に確認するのが早道です。
おわりに
家族や知人の同席は、多くの場合に受け入れられています。記憶や段取りを補い、相談後の実行を支えるという効用も確かにあります。
同時に、同席は共有の範囲を決める行為でもあります。同席者には守秘義務がなく、将来その人が証人となる可能性も残ります。同じ側に見える人でも、時間が経てば立場が分かれることがあります。
だからこそ、同席するかどうかではなく、どの場面で誰に何を聞いてもらうかを自分で決めておくことが役に立ちます。全部同席、一部だけ同席、別室で待ってもらうという選択肢があると知っておくだけで、相談の使い方は変わります。迷う場合は、予約の電話で「家族が付き添いたいのですが、どのような形がよいでしょうか」と尋ねてみてください。事務所の側も、その事案に合う形を一緒に考えます。


