【風俗トラブル】示談で約束した「データ削除」が守られているか確認できる?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2026年10月時点の民法、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)、刑法の規定に基づいて解説しています。実際の結論は、示談書の文言やその後の経緯によって変わることがあります。


「示談書には『写真や録音は削除する』と書いてもらったが、本当に消えたのかが分からない」「店のスタッフが免許証を撮影していたが、示談の後もスマホに残っているのではないか」。風俗店でのトラブルを示談で終えた方から、こうしたご相談を伺うことがあります。

 示談の場面では、身分証の写しや本人の顔写真、やり取りの録音などが相手の手元に残りやすく、示談書に「データを削除する」という約束を入れることは珍しくありません。ただ、約束をしても、削除するのは相手側であり、その様子をこちらが直接見ることは多くありません。

 この記事では、示談で約束した「データ削除」が守られているかを確認する方法と、その限界、守られていないと分かったときの対応を整理します。示談書に入れるべき条項全般については別の記事に譲り、ここでは削除の確認に絞ってお伝えします。

示談書の「削除」条項は何を約束させたものか

 まずは、削除の約束が法的にどのような意味を持つのかを確認しておきます。

削除の対象になりやすいデータ


  • 運転免許証などの身分証を撮影した画像やコピー。
  • 免許証を手に持った状態で撮影された顔写真。
  • 予約時や示談の場で控えられた氏名・電話番号・住所・勤務先の記録。
  • 店内や客室でのやり取りを録音・録画したデータ。
  • LINEなどのやり取りを保存したスクリーンショット。
  • その場で書かされた念書や借用書を撮影した画像。


 免許証を持った写真がどう使われるおそれがあるかについては、身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処で解説しています。

削除の約束は「相手が負う義務」になる

 示談は民法上の和解契約であり、示談書に「削除する」と定めれば、相手方は契約上の義務として削除を行う立場になります。守られなければ、削除を求めたり、損害の賠償を求めたりする根拠になります(民法415条)。

 もっとも、データは複製や転送が簡単にでき、スマホ本体のほかにクラウドや別の端末、他人への送信先にも残ることがあります。削除は相手の手元で行われるため、すべてが消えたことをこちらが外から完全に確かめるのは難しいというのが実情です。確認の手立ては、示談書の書き方によって大きく変わります。

示談書の書き方で、確認できる範囲は変わる

 「データを削除する」と一文だけ書かれている場合と、対象や方法まで定めた場合とでは、後から確かめられることに差が出ます。

定める項目書かれていない場合書かれている場合
削除の対象何を消す約束だったのかが曖昧になる対象のデータを特定して確認できる
削除する場所本体以外の保存先が漏れやすいクラウドや送信先も約束の範囲に入る
期限いつまでに消すのかが定まらない期限の経過後に履行を求めやすい
報告の方法削除したかを尋ねる根拠が弱い書面での報告を求める根拠になる
第三者への提供渡した先について責任を問いにくい提供していないことの表明を求められる
違反した場合損害の立証が必要になる違約金の定めに沿って請求しやすい


目の前で削除してもらう方法と、その限界

 示談の場で、相手のスマホの画面を見せてもらいながら削除してもらう方法があります。写真アプリの「最近削除した項目」まで消してもらうと、端末内からはより確実に消えます。

 ただし、この方法で確認できるのはその端末のその時点の状態に限られます。クラウドへの自動保存や、事前に別の人へ送っていたデータまでは見えません。そのため、目の前での削除とあわせて、次の書面による約束を組み合わせることが一般的です。

削除したことを書面で報告してもらう

 示談書に、期限までに削除したうえでその旨を書面で報告すること、複製物を第三者に提供していないことを表明することを定めておく方法があります。報告書があれば、後にデータが出てきた場合に、相手が事実と異なる報告をしたことを示す材料になります。

 あわせて、約束に違反した場合の違約金を定めておくと、守られなかったときの請求がしやすくなり、約束を守らせる抑止にもつながります。違約金を含む条項の考え方は、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないをご覧ください。

示談が終わった後に確認したいとき

 すでに示談が終わっていても、確認の手立てがまったくないわけではありません。

まず手元の示談書の文言を確かめる

 削除の対象、期限、報告の方法がどう書かれているかによって、相手に求められることが変わります。示談書の控えがない場合は、相手に写しを求めることから始めます。控えの扱いについては【風俗トラブル】示談書の原本を店しか持っていない|控えを求めるべき理由で取り上げています。

書面で削除の状況を問い合わせる

 示談書に削除の定めがあれば、その条項を示して、削除を済ませたか、どの範囲を削除したかを書面で回答するよう求めることができます。

 一方で、ご本人が店に直接連絡すると、それをきっかけに話を蒸し返されたり、別の名目で金銭を求められたりするおそれがあります。問い合わせは、弁護士を窓口にして書面で行う方が、話が広がりにくくなります。示談後に店が閉店したり名前を変えたりしている場合の考え方は、【風俗トラブル】示談の後に店が閉店・名前を変えた|合意は誰に対して有効かで解説しています。

店に対しては個人情報保護法の請求を使える場合もある

 店が事業として顧客の情報を管理している場合、その店は個人情報保護法上の個人情報取扱事業者にあたると考えられます。この場合、本人は、自分のどのような情報が保有されているかの開示を求めることができます(同法33条)。また、利用する必要がなくなった場合や、本人の正当な利益が害されるおそれがある場合などには、利用の停止や消去を求めることができます(同法35条5項)。

 ただし、この請求は事業者としての店に向けたものであり、女性個人のスマホに残るデータにまでは及びにくい面があります。また、営業の実態が不明な店では、請求しても応じてもらえないこともあります。示談書に基づく請求とあわせて、補助的な手段として考えておくのが現実的です。

約束が守られていないと分かったとき

 再び連絡が来た際に削除したはずの画像を示された、SNSに書き込まれた、家族に連絡が入ったといった形で、約束が守られていないことが分かる場合があります。そのときは、次の順で対応を考えます。

  1. 届いたメッセージや投稿の画面を、日時と送信元が分かる形で保存します。
  2. 示談書の削除条項と違約金の定めを確認し、削除と違約金の支払いを書面で求めます。
  3. インターネット上に掲載された場合は、サイトの運営者に削除を申し出ます。
  4. データを示して金銭を求められた場合は、恐喝や脅迫として警察に相談することも検討します。


 慌てて相手の求めに応じて支払うと、同じことが繰り返されるおそれがあります。脅しの材料に使われている段階では、ご自身で交渉せず、早めにご相談いただくことをおすすめします。個人情報を握られた場面の対応は、風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはもご参照ください。

こちらが削除を約束した側である場合

 示談では、利用者側が撮影や録音のデータを削除すると約束することもあります。この場合は、相手から削除を確かめさせてほしいと求められることがあります。

 示談の前に自分の判断でデータを消してしまうと、後から経緯を説明する材料がなくなったり、事情によっては不利に受け止められたりすることがあります。削除のタイミングと範囲は、示談書の中で特定してから行う方が安全です。この点は撮影データを消してしまった|証拠隠滅と復元の実際で解説しています。

 削除を確認させる場合も、スマホの中身を無制限に見せる必要はありません。対象のデータの範囲を決めたうえで、弁護士の立会いのもとで削除し、削除した旨の書面を渡す方法をとると、確認の範囲が広がりすぎるのを防げます。

よくあるご質問


相手が「もう消した」と言っていれば安心してよいですか?

 口頭での説明だけでは、後にデータが出てきた場合に、いつ何を消したと言っていたのかを示すことが難しくなります。メッセージや書面など、記録に残る形で回答をもらっておくことをおすすめします。

示談書に削除の条項がない場合、後から削除を求められますか?

 示談の後に改めて削除を約束する合意書を交わすことは可能です。ただし、相手が応じる義務はないため、交渉によって合意を目指すことになります。店に対しては、個人情報保護法に基づく消去の請求を検討できる場合があります。

確認のために連絡すると、また請求されないか心配です

 清算条項がある示談書であれば、追加の請求には応じる必要がないのが原則です。とはいえ、連絡の仕方によって話がこじれることもあるため、弁護士を窓口にすることをご検討ください。弁護士への相談で個人情報がどう扱われるかは、【風俗トラブル】弁護士に相談すると、こちらの個人情報が店に伝わる?で解説しています。

まとめ


  • 示談書の削除条項は、相手が契約上負う義務となり、守られなければ削除や賠償を求める根拠になります。
  • 削除は相手の手元で行われるため、すべてが消えたことを外から完全に確かめるのは難しいのが実情です。
  • 対象・保存先・期限・報告方法・第三者への提供・違約金を定めておくと、確認できる範囲が広がります。
  • 示談後でも、示談書の条項に基づく問い合わせや、店に対する個人情報保護法上の請求を検討できます。
  • 約束が守られていないと分かったときは、記録を保存したうえで、ご自身で交渉せず早めに相談することが大切です。


 示談で削除を約束してもらっても、その後の不安が残ることは少なくありません。示談書の文言を確かめるところから、確認の求め方や、守られなかった場合の対応まで、状況に応じて一緒に整理します。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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