マナーうんちく話535≪五風十雨≫
暦は「日(か)読み」が変化したものだといわれていますが、太古より人々の暮らしと自然を結び付ける役目をはたしていました。
ちなみに「読む」は数えるという意味があります。
昔の人は、月の形で日付けを知り、太陽の動向で季節を知り、やがて月日を数えるようになり、暦というものが誕生したとか・・・。
ところで前回中国の黄河流域で考え出されて旧暦に触れ、二十四節気を取り上げましたが、今回は、これをさらに初候、次候、末候の3等分して、一年を七十二に分けた七十二候(しちじゅうにこう)にふれてみます。
一年は365日ですから、これを72に分ければ、5日ごとに季節が廻るということで、農耕や生活の、より詳細な目安になるわけですね。
それだけに、花鳥風月、気象、食べ物などの自然の変化を繊細にとらえる必要があります。
そして、それぞれに風情ある名称を付けたものが七十二候です。
二十四節気の名称は中国からはいったものをそのまま取り入れていますが、七十二候は、江戸時代の暦学者の渋川春海が、日本の風土に合わせ何度も改訂しており、日本人の日常生活により密着したものになっています。
自分流の楽しみ方がいろいろあるということで、経費のかからない豊かな生活が謳歌できるということです。
例えば散歩の途中に出会う、草花の芽吹き、鳥の鳴き声、吹く風、降る雨や雪、さらに草木に降りる露のひとつまで、季節感が漂っています。
ちなみに七十二候の最初の候は立春の初侯「東風氷を解く(とうふうこおりをとく)」です。
およそ2月4日から8日頃で、春になって温かい春風が吹いてきて、池や川の氷が解けだすといういみです。
ではなぜ東風でしょうか。
そもそも春の風といえば、南から吹いてくる暖かい風を日本ではイメージするのが普通です。
しかし、東風になっている理由は、前にも触れましたが、七十二候は中国から日本に伝わったので、中国の陰陽五行説の影響を受けているからです。
またこの時期には「春一番」に見舞われることがあります。
さらに食べ物では白魚や蕗の薹が有名で、いずれも「マナーうんちく話」でくわしく触れています。
そして3番目は立春の末候2月13日から17日頃の「魚上氷(うおこおりにのぼる)」で、池や川にはった氷に割れ目ができ、そこから魚が跳ねる頃という意味です。
寒さがあけて次第に春の兆しが見え始める立春の時期に相応しい、とても分かりやすい言葉で、詳細に四季の移りを表現しているのが特徴です。
また3月10日から3月14日頃の、啓蟄の次候に「桃始笑(ももはじめてわらう)」があります。
何とも微笑ましいネーミングですね。
まるで春の到来を微笑んでいるように、桃の蕾がほころび、花が咲く時期ということです。
春は「山笑う頃」と表現しますが、先人は花が咲くことを笑うと表現しています。
ちなみに「桃の節句」は、旧暦では桃の花が咲く頃の節句ですから桃の節句という名がつけられました。
桃には邪気を払う力があると考えられていますが、さらに一つの枝に多くの花を咲かせるので子沢山に恵まれる花とされています。
これに対し3月25日から3月29日頃の春分の次候では桜を取り上げています。「桜始開(さくらはじめてひらく)」で、いよいよ待ちに待った桜が開花する時期で、最近の桜開花にマッチしています。
なんだかんだと言って、季節はそんなに大きくは変化しないよということでしょうか。
4月に入ると4月5日から9日頃の清明の初候に「玄鳥至(つばめきたる)があります。燕が南の国から海を越えて日本にやってくる頃で、我が家にもこの時期になると燕が南国からやってきてくれます。
ただ年々飛来数が減少しているので今年はどうでしょうか。
天敵の烏や蛇や猫から巣を守るために、あえて人の目につくところで巣を作る縁起の良い鳥です。
そして七十二候の最後は大寒の末候で、1月30日から2月3日頃の「鶏始乳(にわとりはじめてにゅうす)」です。
夜明けを告げる縁起の良い鳥として親しまれてきた鶏が、卵を産むという意味で締めくくられているわけです。
ちなみに鶏は、本来は冬には卵を産まず、日照時間が長くなると卵を産みます。
従って、厳しい冬が終わり、これから春に向かって季節がなびきますよと教えてくれているわけでしょうか、よく考えられていると感心します。
2月3日は「節分」です。
次の日が立春ですから、一年のスタートになります。
この様に七十二候は草花の息吹や、鳥や虫の声、吹く風などなど・・・
日々移ろう自然に、畏敬の念を示すとともに、感謝の気持ちを持ちつつ、四季を思いきり楽しむ喜びにあふれた記述になっています。
先人の、自然に寄り添った生活の知恵を理解するとともに、日本ならではの四季を思いきり楽しんでみるのもいいですね。



