マナーうんちく話2266《洋食の「ライス」!本当に正しい食べ方は?イギリス式とフランス式の違い》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:洋食のテーブルマナー

●素直に喜べない!今年も新米の季節がやってきた
秋の語源は実りの季節、収穫の季節を迎え、新米を始め多くの食べ物が市場に飽きるほど出回るので「飽きるが秋」になったという説が有力ですが、私が住んでいる地域でも例年のように、稲刈が始まり、地域全体が活気づいています。

稲の種類は「早稲(わせ)」、「中手(なかて)」「晩稲(おくて)」があり、それにより収穫期は異なります。それに加え南北に細長い日本では地域によっても収穫期は異なりますが、おおむね今頃がピークではないでしょうか。

そして収穫した稲は乾燥させたり、籾摺りをしたり、精米してやっと食べられるようになるわけですが、相変わらず新米価格は高止まりのままで、安安と口に入りそうにありません。

数年前までは、この時期は新米が楽しみだったのですが、今年は最初からあきらめムードです。

中でも餅米(もちごめ)は非常に高いと聞きましたので、今年は餅つきが心配です。
正月に里帰りされる年神様が宿る場所は「鏡餅」ですが、餅米が高騰すれば鏡餅も高くなったり、小さくなるかもしれませんね。

稲作を中心とした農耕文化で栄え、「瑞穂の国」という美称を有し、米を主食にしている日本で、これだけ物が豊かな時代になっているにも関わらず、このような状況になるとは何とも情けない話だと思います。

政治は何をしてきたのでしょうか。
年神様も嘆かれているかもしれませんね。


●日本では洋食でも「ライス」が付く
ところで明治維新を経て、日本に洋食文化が根付いて久しくなりましたが、国際化が進行した今では、洋食を気軽にいただく機会は大変多くなりました。

ホテルや高級レストランで食べるフレンチは別として、カジュアルレストラン、ファミリーレストラン、喫茶店などで食べるハンバーグ、エビフライ、トンカツ定食などには、洋皿に平たく持った「ライス」が添えられてきます。
このライスを、フーク・ナイフを使用してどのように食べるのが正解か?

マナー教本やネットなどでは諸説ありますが、改めて考えてみたいと思います。


●イギリス式とフランス式が混同している日本の洋食マナー
日本の礼儀作法は「小笠原流礼法」だけですが、洋食マナーはそうではありません。

明治維新後日本は、欧米のいろいろな国と交流を促進させ、イギリスを始め、フランス、ドイツ、アメリカなどから様々な文化を輸入しています。

「洋食文化」もしかりですが、明治時代の「洋食」といえば、ヨーロッパ全体の食文化の総称だったようです。
勿論、その当時は庶民には縁遠い存在です。

時代の流れと共に洋食の店が、各地でオープンするようになりますが、利用者は政治家、財界人、高級軍人、学者などの一部の人に限られていたと思います。
ただ、いずれも洋食の経験が無いので、洋食の食べ方にはかなり苦労したと思います。

一方皇室では公式料理はフランス料理が採用されますが、テーブルマナーはイギリス式です。

明治の初めころに日本を訪れたのは、特にイギリス人が多く、その点でもイギリス式というのは妥当であったと思います。
帝国海軍もイギリス式のテーブルマナーを採用しています。

その後日本が豊かになるにつれ、一般の人でも旅行や仕事や留学などでヨーロッパに行く機会が大幅に増加するにつれ、フランス式が認識されるようになり、従来のイギリス式に加え、フランス式のテーブルマナーが根付くようになったということです。

ちなみに私もホテル勤務時代に、フレンチレストラン勤務を長年経験しましたが、フランス式のテーブルマナーを使用する人が、外国人も日本人も多いように思いました。
イギリス式に比べ、フランス式はそんなに難しくないと思うので、ごく自然の流れではないでしょうか。

私は洋食のテーブルマナー講座では、一応両方の説明をしますが、最終的には自分の使いやすい方を選べばいいと思います。


●フランス式とイギリス式の食べ方
〇フランス式
・例えばステーキを食べる時は、右手にナイフ、左手でフォークをもってステーキを食べやすい大きさにカットします。その後ナイフを皿の上部に置きます。
この際、刃先は手前に向けます。
フォークを右手に持ち替え肉を刺して食べます。

・スープを食べる時には、スープスプンを奥から手前にすくいます。

・食べ終わったら、ナイフとフォークは揃えて皿の下に置きます。

〇イギリス式
・ステーキを食べる時に、ナイフとフォークは常に一対になります。
つまりフォークをフランス式の様に右手に持ち替えないということです。
従ってライスを食べる時には、フォークの背にのせて食べるようになります。

・スープを食べる時には手前から奥に向かってすくいます。
音を立てないのはフランス式もイギリス式も同じです。

・終わった後のフークとナイフの置き方ですが、揃えて真ん中に縦に置きます。
6時の方向です。

この他、皿に残ったソースをパンに付けて食べるのはフランス式ですが、イギリス式では残ったソースをパンに付けて食べることはしません。


●結局これといった正解はない
そもそも日本では白い米のご飯が主食ですから、洋食でも「単品として皿に盛ったライス」が提供されますが、これは日本独自のスタイルです。
このような食べ方はフランスにもイギリスにもないでしょう。

洋食での米はあくまで付け合わせで、トマトソースやクリームなどと混ぜ合わせて食べるケースは多々あります。

従って炊いた米を、洋皿に盛ってフォークとナイフで食べる正式な食べ方はありません。

あえて言うならフランス式ではフォークですくって食べる、イギリス式ではフォークの背に載せて食べるのがいいと考えます。

ちなみに和食で、茶碗に盛られたご飯を箸で戴く場合は、三手で頂くのが正しい作法です。

こちらは洋皿に盛られたライスをフォークとナイフで食べるより、はるかに難しいと思いますが、日本人ならぜひ見に付けて頂きたいものです。
これには合理的な理由があります。
「マナーうんちく話」の和食の作法を参考にして下さい。

いずれにせよ、イギリス式にせよフランス式にせよ、円滑なコミュニケーションを図りながら、楽しく美味しく召し上がることが大事です。

装いや会話、そして食事中の姿勢、さらに料理のスピードを周囲に合わせることも心がけて下さいね。

ナイフ・フォークの使い方ばかりに神経を集中させ、会話がおろそかになっては本末転倒です。

食べ終わったら、美味しかったことを身体全体で表現できればたいしたものです。


●明治維新後は、いろいろな国の文化を採用
明治維新後には、いろいろなマナーの面で大きな混乱があったようです。

明治4年に陸海軍制度が布かれ、欧米から士官を招き軍隊教育が行われます。
「マナーうんちく話」でも触れていますが、軍楽隊の教育にも欧米の複数の国の士官が派遣され、国歌の作成にかかった経緯があります。

洋食のマナーも軍隊で取り入れますが、海軍は英国式作法を、陸軍はフランス式を採用しています。

また発動機もそうですね。
東京はドイツ製の50Hzを採用しますが、大阪はアメリカ製の60Hzを採用しています。

これらは新たに採用した文化ですから、ある程度順応できますが、困ったのは従来の日本伝統文化が、新たに入ってきた欧米文化によって影を潜め、曲げられることです。

例えば日本は明治維新までは左上位であり、男性優位でありました。
暦は太陰太陽暦であり、年齢の唱え方は数え年です。

しかし明治維新後に欧米から入ってきた作法は右上位で、レディーファーストです。暦は太陽暦であり、年齢の数え方は満年齢です。

何百年もの間、生活に密着していた文化を、安安と変えるわけにはいきません。
しかし欧米とも標準を合わせなければいけません。

さぞかし世の中が動揺したことだと思います。

日本の伝統文化を守るか、国際基準にそぐうか?
難しい選択ですね。

ただ当時はお国のために、身を挺して尽くす人も多く、偉人といわれる人が沢山輩出されています。
この点が、今と大きく異なるところではないでしょうか。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

講演会で大活躍!マナーと生きがいづくりのプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ岡山
  3. 岡山のスクール・習い事
  4. 岡山のカルチャースクール
  5. 平松幹夫
  6. コラム一覧
  7. マナーうんちく話2266《洋食の「ライス」!本当に正しい食べ方は?イギリス式とフランス式の違い》

平松幹夫プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼