まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
10月の和風月名は「神無月」ですが、これは全国の神様が出雲大社に出張されて、大国主命(おおくにのぬしのみこと)の下で会議をされるからです。
つまり全国の神様が出雲に出向き、不在になるので「神無月」になるわけです。
では出雲でどんな会議をされるのでしょうか?
会議は「神議(かみはかり)」といわれ、その内容は米作りの事なども議題に上がりますが、主に「ご縁」に関することです。
ただ今年も米が異常に高騰しているので、そのようなことが議題に上がるかもしれませんね。
出来れば今の政界に、良き指導者を派遣していただければありがたいのです。
米を単なる商品として捉えるのではなく、日本の文化や食文化の根源を成す、とても大事な資源として捉え、持続可能な生産体制を構築できる人がいいです。
縁結びに関しては、目に見えない人の様々な縁や運命を司るのが大国主命ですから、全国の神様が、そのお膝元の出雲大社に出向いて、縁に関する活発な議論を展開されると思いますが、特に少子化対策には力を入れて頂きたいものです。
このように出雲地方では、「神無月」ではなく「神在月(かみありつき)」になり、出雲地方の多くの神社では、神様をお迎えして「おもてなし」する神事が沢山おこなわれます。
旧暦の10月10日に、全国津々浦々の神様は、日本海を渡って出雲地方の「国譲り」の舞台になった稲佐海岸でお迎えを受け、そこから約1キロメートル離れた出雲大社に向かわれます。
この道が「神迎え道」です。
出雲大社に到着した神様たちは、翌旧暦10月11日から17日まで会議を行いますが、この間「神在祭」が開催されます。
このときに振舞われたのが、米粉で作った団子に小豆をのせた「神在餅(じんざいもち)」ですが、じつはこれが今の「ぜんざい」です。
出雲弁はズーズー弁なので「じんざい」が「ぜんざい」と聞こえたため、全国に「ぜんざい」として広まったわけです。
縁結びの神様として出雲大社に祀られている大国主命は、苦労して国土を開拓された「国造りの神様」でもありますが、その後、その国を天照大御神に譲ずります。
「因幡の白うさぎ神話」とともに「国譲りの神話」は有名です。
国を譲った代償として造営されたのが、今の出雲大社の起源といわれています。
ところで、この世のあらゆる縁を結ぶといわれている出雲大社には、良縁を求め多くの人が参拝に訪れますが、参拝の作法は「2礼4拍手1礼」です。
拍手は「はくしゅ」あるいは「かしわで」とも読みますが、手を合わせて音を出す意味です。
手を打つことで神様と一体になるわけですが、この際左手が神様、右手が人間と考えますので、左手を右手より、やや上にして神様に敬意を払います。
また「拍手」は日本古来の拝礼作法で多種多様な作法が存在します。
一般的には「2拍手」ですが、出雲大社が「4拍手」になるのは、四季を意味して繁栄を祈願するとか、4つの方位を守って下さる神様への敬意とする説があります。
私も何度も出雲大社を訪れましたが、この地にはデジタル社会が置き去りにしてしまった祈りの心、人の温かさや優しさ、礼節など日本文化の懐の深さが根付いていると思います。
さらに神迎えの神事に見られるように、目には見えない神様や自然に対し、誠心誠意、心を込めて、裏表なくおもてなしする姿に、学ぶべきことが多くあるような気がします。
これこそが日本ならではの「おもてなし」であり、すべての人がこの心を身に着け、様々なシーンで素敵に発揮することで、世の中が明るくなると考えます。
デジタルは確かに便利な社会にしてくれましたが、幸せな社会を構築できるかといえばはなはだ疑問です。
使い方を誤れば不幸のどん底になるでしょう。
現代の戦争がそれを物語っています。
「行楽の秋」と呼ばれますが、この秋、ぜひ出雲大社に参拝し、人間性や人の心に触れてみるのもお勧めです。
10月終わり頃は「涼しい」から「寒い」に季節が進みます。
体調管理に気をつけて、秋の風情をしっかり味わってください。



