マナーうんちく話2247《米価のみならず、日常生活に深く根付く「米文化」に関心を寄せたい皐月・5月》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

瑞々しい新緑が大変心地よい季節になりましたが、以前に比べ夏の到来が非常に早くなった気がします。

夏野菜の植え付けもそうです。
トマト、キュウリ、ナスビ、ピーマン、カボチャなどの苗が、店頭に並ぶのが10年前に比べたらとても早くなりました。

勿論売る側の販売戦力もあると思いますが、気温が高くなってきていることは確かだと感じます。

しかし「八十八夜の忘れ霜」という諺もあります。
気温が高くなったから大丈夫ということで、安心して早く苗を植え付けても、突然霜にやられることもあります。

天からの「油断大敵」の警告だと思います。

ところで今まさに春のフィナーレを迎えていますが、今の時期には「百花の王」と呼ばれる「牡丹」が見ごろを迎えます。

牡丹の「牡」は「オス」で「丹」は赤を表します。
萌えるような赤色をした大輪の花を咲かせ、存在感抜群ですが、これとよく似たボタンよりやや小ぶりの「芍薬」もこの季節です。

牡丹が「百科の王様」と呼ばれるのに対し、芍薬は「女王」と呼ばれています。

牡丹に芍薬と来れば「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」という江戸時代の諺を思い浮かべる人も多いと思います。

江戸時代の女性の服装は着物ですから、着物を着た女性の立ち居振る舞いの美しさを褒めたたえた言葉です。

着物を着た女性が畳に正座している姿は世界一美しいといわれていますが、日本ならではの素晴らしい文化だと思います。

ちなみに百合は5月の終わりから6月頃になりますが、「百合」の漢字は球根の鱗片が何枚も重なってできていることに由来しています。

背が高い百合の花は、そよ風に吹かれゆらり、ゆらり揺れるので「揺る」が変化したという説もあります。

ところで5月といえば「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」(山口素堂)と詠まれたように「青葉」がお似合いですが、これは桜が散った後の若葉です。

またお茶も新茶の時節を迎え、「八十八夜」の茶摘みの季節でもあります。

八十八夜は立春から数えて88日目の「雑節」ですが、88は「八」と「十」と「八」に分類され、これらを組み合わせると「米」になるので、昔から大変縁起がいいといわれています。

百花繚乱の風景から緑が映えるとても爽やかなシーンに移り変わりますが、間もなく田植えも始まり、やがて緑の絨毯のお目見えということになります。

今日本の米が岐路に立たされ、相変わらず米価の高値が続いています。

「瑞穂の国」の美称を有し、長年米を主食にしている国で、このような現象が長く続くとは本当に情けない限りで、この国の行く末が心配です。

確かに最近の暑さ・寒さは以上ですが米は不作でも凶作でもありません。
なのに、1年間に2倍以上米価が高騰するのは異常でしょう。
蔭で誰が儲けているのでしょうか?

また米価に一喜一憂するのも無理もないと思いますが、米を主食にしているわけですから、米作りに込められた先人の思いを酌んで欲しいものです。

神道を信ずる日本では、神様の恵みや豊穣を象徴する米は、日本の文化や経済を支えてきた日本人にとってこの上ない大切なものであり、日常生活に深く根付いているからです。

例えば日本は四月が年度初めですが、米作りが大きな影響しています。

4月に桜を囲んで「花見」をしますが、サクラの「サ」は米の神様であり、農民が米の神様が宿る桜を囲んで酒とご馳走を共に戴き、五穀豊穣を祈願します。

「神人共食文化」で、神様と食事を伴にすることにより、神様とより親しくなれ、より多くの願い事を聞いていただく魂胆でしょう。

また5月は旧暦では皐月ですが、「早苗月」で田植えをするため早苗を作る月という説もあります。

6月は「水無月」で、「無」は「・・の」という意味であり、「水無月=水の月」で、田植えをするので田んぼに水を張る月です。

そして5月、6月に田植えをした稲は10月、11月に収穫をしますが、江戸時代は収穫した米で年貢を納めていました。

明治になると金本位制になり、現金で税金を納めるようになるので、収穫した米をいったん現金に替えて、それから税金を納めます。

この金で年度予算を組むということになるので、4月が新しい年度になったということです。
日本は、近代国家誕生前まで、税は米で支払っていたということです。

さらに日本には祭りが数十万存在するといわれますが、「祭り」の目的は豊作祈願と収穫への感謝が大多数です。

5月の「端午の節句」も、もとは米作りが由来です。
「マナーうんちく話1456《日本人なら知っておきたい端午の節句に込められた多彩な意味》」を参考にして下さい。

この様に米は経済や文化や信仰の中心であり、他の野菜とは一線を画す特別な存在であり、日本は米作りから始まったといっても過言ではないと思います。

それゆえに、米価だけでなく、もっともっと米に対する認識を深めたいものですね。

このままではコメを中心とした日本の食文化が大きく変わりそうです。

ユネスコの無形文化遺産にも登録されている時刻も食文化を、今になって変えてどうするのですか。

5月18日の「実食を伴わない和食のテーブルマナー講座」では、このような話にも触れる予定です。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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