マナーうんちく話604≪武士は食わねど高楊枝≫
厳しい寒さも峠を越し、周囲の山が眠りから覚めつつあり2月14日に、日本の「しきたり」についての講演を行いました。
2月のバレンタインデー、10月のハロウイーン、12月のクリスマスなど、本来はキリスト教国の行事が日本に入って以来、これらの行事を知らない人がいないくらい日本では定着し、大きな経済効果をもたらしています。
またインバウンド客で日本は大変賑わっています。
反面、日本の伝統行事が影を潜めている面も多々あります。
お釈迦様の誕生日や日本の国の誕生について、詳しく理解している人が少なくなりましたね。
儲けにつながらないから仕方ないとか、国際化の時代だからということで割り切ってしまうのも、いかがなものかと考えます。
国際化とは先ずは自国の歴史や文化や作法に精通し、それを正しく次世代に紡ぎ、そして国際社会に発信することではないでしょうか。
トランプ大統領はアメリカファストと言っていますが、自国の歴史や文化は大切にしたいものですね。
日本には世界に誇れる文化や作法が多々ありますが、ここ数十年でそれらが急激に影を潜めた気がしてなりません。
楽しければいい、儲かればいいのでしょうか。
2月14日のバレンタインデーは大変大きな話題になるのですが、2月11日の「建国記念の日」は、法律が定めた国民の祝日でありながら殆ど取り上げられることがないのが気になっています。
今、少子化が大きな課題になっていますが、先ずは国に対する愛国心を養うことが大事ではないでしょうか。
そのためには日本の事をよく知り、誇りを持っていただくことだと思うのですが・・・。
そこで今回は若い人から高齢者まで、多くの人に再認識していただきたい「暮らしを豊かに彩る日本人のしきたりと知恵」というタイトルで、儲けには直接結びつかないかもしれないけど、日本のすばらしさをお話ししました。
●始めに
スマホ全盛の時代になりましたが、私たちの暮らしの中には先祖代々に渡って守られ、受け継がれてきた様々なしきたりが存在します。
しかし、その意味や理由を理解しないで、いわば盲目的に続けられている面も多くあります。
ちなみに、日本の美しい伝統文化であるしきたりには「なぜそうするのか」というとても合理的理由が存在します。
例えば私たちが日常生活でほとんど毎日のように触れる「箸」もそうです。
「箸食文化」は世界の総人口のうち約3分の1をしめますが、日本は箸を横に並べます。
そして箸先は左側に向けます。
加えて「箸置き」を使用します。(使わない人も多いですが)
これらには中国の思想や、食べ物への敬意が込められていますが、その理由を理解している人はごく少ないのが現状です。
「箸置き」を使用する理由もそうです。
さらに、和室での「座礼」や扇子を使った「挨拶」なども、もはや日常生活で見る機会はほとんどなくなりました。
そればかりか、インバンド客に対応するため、旅館などの和室の文化がどんどん変化していっています。
例えば旅行で旅館に泊まった時のことですが、和室の座布団が円錐形の大きなクッションになっていました。
外国人は喜ぶかもしれませんが、私のような昭和人間にはがっかりでした。
日本は2025年で建国2685年の誕生を迎える、世界でも最も長い歴史を有する国ですので、にほんの「しきたり」の背景には長い・長い歴史と伝統があります。
それらを正しく理解することで、先人の思いや生活の知恵により親しむことができ、日常生活に憂いが生ずるでしょう。
●講話の内容
〇2月11日の「建国記念の日」について
奈良時代に天皇の銘を受け編纂された日本書記によると、紀元前660年2月11日に日本の初代天皇である神武天皇が即位されたこと、そのご126代にわたって受け継がれており、世界でも例を見ない長さの系譜になっていること。
および、後日改めて詳しく触れますが日本の国旗「日の丸」と、国歌である「君が代」の歴史と歌詞の意味、さらに国旗掲揚と国歌斉唱の作法について。
また戦前は「紀元節」と呼ばれた「建国記念の日」ですが、今では日の丸を掲げることがほとんどなくなったことと、愛国心が薄れてきている現状について触れました。
〇文化を学ぶにはまず作法から
・襖の開け閉て
※襖を開ける時には「咳払い」をする理由及び開け閉ての作法など、思いやりや相手に対する敬意が根源になっている日本の礼儀作法のすばらしさについて丁寧にお話ししました。
〇和食しきたり
和食の基礎知識と作法、「本膳料理、会席料理、懐石料理」の基礎知識や世界でもあまり例を見ない高度な作法についてお話しました。
さらに〇身だしなみの心得、〇訪問の心得などに簡単に触れ、〇幸せを招く縁起のしきたり、例えば「生き物」であるたぬき、鶴、亀、蛙、ふくろう、伊勢海老などが、縁起が良いとされている理由をお話ししました。
次に「縁起の良い植物」として重宝されている松竹梅、桃、榊、南天などに触れ、その後、長い歴史を有する下記のしきたりを説明しました。
〇「どうして?」と首をかしげるしきたり
・大安、仏滅などの信ぴょう性
・喪中に鳥居をくぐってはいけない理由
・葬儀に「も服」を着用する理由
〇「行事食」のしきたり
七草の節句、桃の節句、菖蒲の節句、七夕、菊の節句
赤飯について
〇手締め、鏡開き、乾杯のしきたりと作法
〇日本人の自然観と信仰
・旧暦と二十四節気、ハレとケ、八百万の神
〇しきたりに関する諺
仲人は草鞋千足、喪服の時は片化粧、南竹藪・殿隣など今ではほとんど口や耳にすることがなくなったけど、先人の思いについて触れました。
特に良好な人間関係を築き、維持し、深めるためにこれらのしきたりの存在意義を詳しくお話ししました。
休憩をはさんで、「身体ほぐし体操」を行い、改めて下記のテーマで、5人の小グループに分け《グループワーク》をやっていただきました。
〇葬儀の時の「清め塩」を帰宅して使用するか否か?
その理由について述べて頂きました。
〇祝儀の時やお布施に新札を使用する理由
〇「お酌」について(肯定的か否定的か)
〇「家族葬」をどう思うか
〇法要後の食事について
●所感
50代から90代まで、元行政職員、教員、ボランティ活動に従事している人、お茶やお花の先生、主婦、地域のふれあい会役員などなど、多彩な方が大勢参加され、いろいろ意見を交わしていただきました。
その結果、戦前の教育を受けた人と戦後教育を受けた人とでは、しきたりなどに関して捉え方が大きく異なったのが印象的でした。
また葬儀や法事等に地域性を全然感じなくなった気がしました。恐らく全体的に地域の絆の稀薄になったということでしょう。
「和の精神」が薄れてきたことを物語っていると思います。
さらに同じ華道師範でも、椿が、縁起が良いと捉える人もいれば、悪いと思って敬遠してきた人もいて人により、あるいは流派により異なるのかなと感じました。
紫陽花などもそうですが、やはりプレゼントするような場合は相手がどのように感じているのか、気にした方がいいですね。
総じて「しきたり」は法律ではないので、捉え方に大きな相違があることがよくわかりました。
それとともに、今回テーマに取り上げたいろいろな「しきたり」が、若い世代に全く伝わっていないような気がしました。
バレンタインデーということもありチョコレート持参で参加して下さった人も多く、場が大変盛り上がり、和気あいあいの雰囲気で貴重な意見を交わしていただきました。
そして今回も多くの感想を寄せて頂きました。
まことにありがとうございました。
山が笑う頃には、全世代を対象に「和食」の作法・無作法について、かなり詳しく触れる予定です。
和食に関する、いろいろなテーマで講話、演習、そしてグループワークで進めてまいります。
多世代の参加をいただき、どんな意見が出るのか楽しみです。
地域、各種団体、学校等へも出向きます。
お気軽にお問い合わせください。