マナーうんちく話342≪マナー美人⑨「旅館のマナー」≫
日本は長い間平和な社会を築いてきましたが、そんな社会背景から生まれた礼儀作法には、相手に対する敬意や思いやりの気持ちが多分に込められています。
だから礼儀作法は窮屈、堅苦しいと捉えるのではなく、敬意や思いやりや感謝の気持ちを具体的に表現し、相手と良好な関係を築く潤滑油と思ってください。
今回は「座布団を踏むな」「畳のふちを踏むな」の慣用句に触れてみます。
③座布団を踏むな
座布団は、おしりと畳のクッション的役割もありますが、もともと上位の人に敬意を表すために作られたものです。
武士の自宅に上役が訪ねてきたら、相対して座るわけですが、「あなたは偉い人ですから私より高い位置にいて下さい」との思いで用意されるわけです。
従って、出された座布団を踏むということは、せっかくの相手の敬意を踏みにじむことになります。
座布団は踏まない、動かさない、裏返さないと覚えて下さいね。
また、相手宅を訪問して座布団を進められても挨拶が済まない内は、座布団は使用しません。
さらに座布団に座っているときに、違う人が来て挨拶するときには、再度座布団から降りて挨拶します。
身体の調子が悪い時は別として、座布団に座ったままでの挨拶は極力控えて下さいね。
④畳のふちを踏むな
これには諸説あります。
前回触れた「敷居」がその家の象徴とすれば、畳のふちは家の「格」そのものと言えるでしょう。
畳のふちは贅沢に作られており、絢爛豪華な模様が施されていたり、家紋が埋め込まれていたようです。
だからそれを踏むことは、主の権威を傷つけることになります。
頷けます。
一方このような説もあります。
屋敷内で主に食事を運ぶのは下女の役目ですが、位の高い主の食事ですから、箱膳を目の高さまで持ち上げて運びます。
このとき下がよく見えないので、畳のふちを踏まないように、注意して運ぶようにと、主が下女にかけた思いやりの言葉だともいわれています。
秋ナスの美味しい季節ですが「秋茄子は嫁に食わすな」といわれます。
姑が嫁を虐めているような意味もありますが、美味しさが増した秋ナスは体を冷やすので、嫁がたくさん食べると、体を冷やし、子どもができにくくなるので、姑が嫁の身体をおもんばかる言葉だといわれています。
いろいろな意味がありますが、捉え方次第で趣が変わってきますね。
ただ前述したように、礼儀作法の根源は相手に対する思いやりですから、私は良い方に解釈したいと思っています。
自分磨きのために、自分を格好よく見せるマナーもあるようですが、マナーはあくまで「相手目線」だということをお忘れなく。