マナーうんちく話239≪バラ色の人生とマナー≫
昔から使われている、二つ以上の単語からなる、ひと纏まりの言葉を「慣用句」といいます。
習慣として長い間全国で広く使用されてきましたが、とにかく数が多くそれぞれの意味を正しく理解するのは大変ですが、日常生活で特に使用頻度が高いものは、出来る限り正しい意味で使いたいものですね。
今回は「敷居」に関する言葉を取り上げます。
●「敷居」とは?
最近はマンション暮らしの人も多く、加えて一軒家でもバリアフリー化で次第に敷居が影を潜めてきた感がありますが、敷居とは門の内と外との区切りとして敷く横木です。
障子や襖の開け閉てがスムーズに行えるように、床に渡す横木の意味もあります。
ちなみに上についている横木は「鴨居」です。
つまり敷居は下の横木、鴨居は上の横木ということですね。
●「敷居が高い」の本来の意味
高級さや格式の高さにひるんで、高級店や高級ホテルに気軽に行きにくい意味で使用されるケースも多々ありますが、本来の意味は、相手に不義理なことをして、「その人の家に行きにくい」「その人に会いにくい」という意味です。
つまり、大変世話になったにもかかわらず何年もお礼もしていないし、季節の便りも出していないとか、苦労して大金を用立ててもらったのに、いまだに一円も返済していないので、その人の家は訪問しづらいという意味のようですね。
従って高級品や格式の高さに遠慮する意味はないとおもうのですが、いかがでしょうか。
また「敷居が低い」という言い方も違和感を覚えます。
敷居や鴨井は、上げたり下げたりするものではないので、「敷居が高い」とは心情的に門の敷居を高く感じるわけです。
なんとなくうしろめたさのようなものがあるのでしょう。
●「敷居を踏むな」の意味
敷居はその家の象徴だから、敷居を踏むことにより、家の主を踏みにじることになる意味で使用されます。
また敷居は家の構造上とても重要な役目をしているので、傷つけずに大事に扱う意味でもあります。
さらに敷居にはトゲなどもあり、身を守る意味もあります。
そして敷居には世間と家、家の部屋と部屋を隔てる「結界」の意味があります。
だから敷居を踏めば境界線が崩れ、とんでもないことになるので踏んではいけないと諭したのでしょう。
私は「おもいやり」を根源とする日本のマナーの視点から言えば、この説を信じたいと思っています。
特にマナーの世界では、結界に重きを置く捉え方は多くあります。
例えば、改まった席での座礼の際、手前に扇子を置くのもそうです。
加えて、和食で箸を横に揃えて並べるのもしかりです。
「マナーうんちく話」でも多くの事例に触れていますので、機会があれば参考にして下さい。
マナーも年中行事も言葉もそうですが、長い歴史の中で、特に身近で頻繁に使用されるものは常に変化します。
だから年中行事の由来や慣用句の意味も、推測の域を出ないものが多く、諸説あるわけですが、できる限りそれらが作られた思いをくみ取りたいものですね。
敷居という横木の真上にある横木は「鴨居」ですが、鴨という字と家の関係は少々不思議な気がします。
鴨は水鳥ですので、鴨の字を使用することにより、火災から家を守る役目を期待したとか・・・。
奥が深いですね。
何分にも、昔は科学も医学も未発達だったので、とにかく縁起を担いだり、神に祈ることに重きを置いたのでしょう。
次回は畳と座布団を取り上げます。