マナーうんちく話2140《変わりゆく死生観と葬儀の在り方。どうする?》周囲との良好な関係を!》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:超高齢社会に対応するマナー

明治維新とともに様々な西洋文化が日本に伝わり、国民の生活様式が激変しましたが、それが全国的に拡大したのはやはり第2次世界大戦後からでしょう。

その結果、それまで存在していたしきたりが「時代遅れ」「古臭い」などと、置き去りにされたケースも多々生じてきたように思います。

例えば食事のマナーといえば「洋食のマナー」に価値が高まったように記憶しています。

それに伴い、日本の伝統的なしきたりや習慣が解らなくなってきた人が増えたということです。

美しい箸使い、和室での立ち居振る舞い、贈答の知識、盆や彼岸の迎え方・過ごし方などなど・・・。

しかし、日本が高度経済成長を成し遂げ、世の中が豊かになり、生活が安定してくると、物の豊かさから「心の豊かさ」を求めるようになってきます。

昭和時代の「モノが豊か=幸せ」の構図は、平成になり「心の豊かさ」を求める構造に変化し、それをSNSの普及が促進したというわけです。

こうなると欧米文化だけでは、その要求は満たしきれず、再び日本の伝統文化に注目が集まります。

日本的なしきたりや習慣は、人生の4大儀式である冠婚葬祭の中に生き続けています。


現在日本は世界屈指の長寿社会を迎えていますが、「生まれてくる子ども」より高齢で「亡くなる人」の方がはるかに多い少子多死社会です。
葬儀が増加するということです。

そんな中「葬儀」の在り方が大きく異なりました。
加えて生きることや死ぬことに対する自分なりの考え方、つまり死生観も変わってきていると思います。

長引くコロナの影響も大きかったですね。
新型コロナで亡くなった外国人の多くの遺体が、行き場を失った様子がテレビで報道されていましたが、悲惨な情景でした。

戦争以外でこれほど死というものをリアルにとらえられるシーンはあまり経験がなかっただけに、多くの人が年代に関係なく、死を身近に感じたのではないでしょうか。


ところで葬儀とは死を弔う儀式ですが、本来はとても厳粛で複雑で、若い人には比較的なじみの薄い儀式です。

加えて日本には多くの宗教が存在します。

さらに国民の多くが信仰する仏教だけでも多くの宗派があり、これに加え神道やキリスト教もあります。

キリスト教にも新・旧があり、さらに新興宗教も少なくないので、複雑さに輪がかかります。通夜、葬儀、告別式、法事のスタイルも様々ということです。

例えば今までは「通夜」があり、多くの参列者のもと「葬儀」「告別式」が執り行われ、さらに「火葬」と2日間に及ぶ「一般葬」と呼ばれるものが多かったのですが、このスタイルが変化しました。

ちなみに私の幼いころの葬儀は、自宅で祭壇を作り、遺体を安置し、僧侶の読経があり、通夜も葬儀もあるスタイルがごく一般的でした。葬儀は地域の人が仕切り、参列者も結構あり、通夜振舞も精進落としもありました。


今、コロナで人と人との交流が制限され、これに換気や適切な距離を保たなくなければいけなくなった結果、先ず葬儀への参列者が激減し、家族のみで葬儀を執り行う「家族葬」と呼ばれるものが増えました。

さらに通夜を執り行わなくて「葬儀」と「告別式」を一日で行うスタイルや、通夜も葬儀も告別式も行わずに火葬のみの「直葬」と呼ばれるものまで登場しているようです。

また会食もコロナ感染のリスクが大きいので、通夜の後の「通夜ふるまい」も、葬儀後の「精進落とし」もなくなってきています。
会食なしで弁当配布となるわけです。

葬儀の本質は、故人との最後の時間をどのように過ごすかだと思いますが、できることが限られてくると致し方ない面も多々あります。

リスクはあっても「一般葬」にするか、それともリスクを回避して「家族葬」にして、コロナが落ち着いたら改めて「お別れ会」や「偲ぶ会」を開催するか、それとも直葬で弔うか、いずれにせよ価値観が多様化し「これといった定番スタイル」がなくなってくると、葬儀の選択肢は益々増えそうですね。

四十九日法要や一周忌のこともしかりです。

コロナのせいで葬儀も「簡素化」され、参列者も「少人数」になりましたが、いざという時には弔いの形をどうするか、日頃から話し合っておく必要が出てきたと考えます。

また葬儀は短時間で多くのことを決めなければならないので戸惑いますが、今のような非常事態となるとなおさらです。

ちなみに死生観を学問として扱っている国もあるそうですが、日本の公立の学校では宗教教育はありません。

欲を言えば宗教に関する本を読み、葬儀の目的や格別な宗教的意義があるのか?などについても時には考えてみるのもお勧めです。

そして自分なりの死生観を明確にしておくことが大切と考えます。


もともと日本には死者を身近に感じる文化が存在しています。

例えば正月と盆。
一年に2回先祖があの世からこの世に里帰りする文化があります。

またお彼岸にはお墓詣りをして祖先と語ります。

しかし自分の死に触れることはタブー視されていました。

加えてあくまで想像の世界でしかない「死後の世界=あの世」に対する考え方や価値観は人それぞれです。
つまり正解がないということです。

だからこそ自分なりに明確にとらえておく必要があると考えます。

その上で、今までの人生を振り返るとともに、自分の終わりをどのような形で迎えたいかを、自分なりに決めておくことが大切ではないでしょうか。

そのことが、今をどのように生きるか、前向きに生きるヒントになるでしょう。


超高齢化社会の特徴は独居高齢者の増加です。
葬儀も家族化、そして個人化傾向に進むことも予想できます。

その上で自分なりの葬儀に関する考えをまとめ、身近な人との話を進めておければいいですね。
意見の共有ということです。


最後に婚礼は当事者が主体的に取り組むことができますが、葬儀はそうは参りません・

必ず誰かに頼るようになります。

ということは他人の葬儀を執り行わなければならないということです。
そして自分の葬儀はだれかに依存しなければなりません。

なにかとコミュニケーションの重要性が高まってきたということです。

逆に言えば、日頃から周囲と良好な関係が築けていれば、何とかなるというのが私の持論です。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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