マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
SDGsが話題になっていますが、最近空から降ってくるほどの満天の星を見たことがありますか?
満天の星が見える条件は、夜空の暗さや空気の澄み具合に影響されますが、今ではめっきり少なくなりましたね。
便利で物が豊かにはなったけど、心が洗われるような夜の絶景はなかなかお目にかかれなくなったということです。
文明が進めば仕方ないことだと思いますが・・・。
得るものもあれば、失うものもあるということでしょうか。
科学が発達していなかった昔は夜空に輝く星が「道しるべ」になり、何百年も、何千年も同じ星を眺めながら暮らしを立てていたことを思うと、本当に星が辿ってきた歴史は壮大ですね。
今回は「牽牛星」と「職女星」の織りなす「七夕伝説」に触れてみたいと思います。
数多くある年中行事の中でも七夕は実施率の非常に高い行事ですが、中国の「星伝説」や「乞功でん」、そして日本の神事「棚機(たなばた)」の行事などが合わさった物語です。
ちなみに私が幼い頃には、七夕の日には「素麺」をお供えしたものです。
昔は二毛作が多く、この時期には小麦の収穫に感謝して、小麦で作った素麺を「天の川」に見立ててお供えしたわけです。
天帝の娘「織姫」が紡ぐ糸に見立てたという説もあります。
ところで夏の星座の中には、一等星の明るい「牽牛星」と「織女星」があります。
七夕は牽牛(彦星)と織女(織姫)が天の川を挟んで、一年に一度の逢瀬を楽しむ日ですが、彦星の仕事は牛飼いです。
では七夕伝説になぜ牛飼いが登場するのか?
これには意外に深い意味が込められています。
稲作を中心とした農耕文化で栄えた日本には、米作りに関する様々な物語がたくさん存在します。
「花見」「田植え」「早乙女」や日本の「祭り」「正月」もしかりです。
7月7日といえば、田んぼにとって最も水が欲しい時です。
今のようなため池も少なく、水を汲み上げる技術も未熟な時に、干ばつに見舞われたら手も足も出ません
勿論給水車もありません。
どうする?
全国各地に「雨ごい」の儀式がありますが、雨ごいをするには「いけにえ」が必要です。
実は牛が雨ごいの「いけにえ」として捧げられたという説があります・・・。
牛や羊を雨ごいの生け贄にするのは、恐らく雨を降らす暗雲を連想したのでしょうが、アジアではよくみられたそうです。
人間の都合で、生きたまま神にささげられた牛や羊はたまったものではありません。
でも昔の人はひどいことをすると思わないで下さいね。
これが生きるための手段なのです。
ちなみに現代人は地球に「やさしく」とか「SDGS」とか「クールビズ」とか言っていますが、毎日のように牛や豚や羊や鶏を大量に殺して食しています。
そればかりか核兵器も使用します。
「核戦争に勝者はいない」といわれますが地球にも大打撃を与えます。
昔の比ではないでしょう。
七夕伝説を「彦星」と「織姫」の逢瀬を楽しむロマンと捉えるか、深刻な干ばつへの雨ごいと捉えるか?同じ物語でも大きな違いがあります。
持続可能な世界を本当に実現するのであれば、悲しい物語も避けて通れません。
そして今現実に起きている戦争にもっと関心を寄せるべきだと思うのですが・・・。