マナーうんちく話535≪五風十雨≫
木の葉の緑は目にいいと言いますが、新緑に風薫る季節の香りや色から元気を分けてもらいたいものですね。
5月21日から6月5日までは、二十四節気の「小満」です。
あまり聞きなれない言葉だと思いますが、万物が太陽の光をさんさんと浴びて、元気に成長し、天地に満ち始める頃です。
紫外線が非常に強い時期でもありますので、日焼けが気になる人は注意が必要な頃でもあります。
ではなぜ「小満」という名がついたのでしょうか?
実は麦の穂がこの時期になって育つので、それを見てホッとする、つまり少しだけ満足するから、小さい満足となったわけです。
昔は米や麦などの穀物は命に直接かかわる貴重品だったので、もし米が不作だった時に備え、二毛作、つまり同じ畑に種類の異なる、米と麦を育てたのでしょう。
ちなみにこの時期の言葉で「麦秋」があります。
「麦の穂が実って、いよいよ刈り入れですよ!」というわけですね。
普通収穫の時期は秋ですが、麦は今頃収穫されるので、麦にとっては収穫期ですから「麦の秋」となります。
麦を収穫したら田植えの準備が始まります。
だから小満は田植えの前の大仕事をこなす頃でもあります。
昔は今のように天気予報が存在しなかったので、自然の変化を察して情報を仕入れなければなりません。
《マナーうんちく話》でもたびたび触れましたが、昔の人は、山桜の開花で田植えの時期を知り、ホトトギスの声や麦秋から判断して、田植えの準備に取り掛かったのでしょう。
それにしても忙しいことです。
日本に「MOTTAINAI精神」が根付いたわけが理解できる気がします。
ところで、梅雨が近くなってきたようですが、天気予報では、本州の本格的な梅雨は、今年はまだ先のようです。
「走り梅雨」という言葉をご存じでしょうか?
天気予報で時々聞く言葉ですが、本格的な梅雨の前に、まるで梅雨の到来を思わせるような雨が降ることです。
「梅雨の走り」ともいいますが、「走り」とは先駆けという意味です。
そしてこれに関連して「卯の花腐し(うのはなくだし)」があります。
「うのはなくたし」ともいいますが、せっかく咲いた卯の花が長雨によって腐れてしまうこと、つまり卯の花を腐らす雨という意味です。
昔はほとんどの人が農業で生計を立てていたので、季節の風情を感じさせる美しい言葉を沢山残してくれました。
特に雨は作物の成長を助けるので、長雨に関する季節の言葉は、まさに生活の知恵でもありますね。
例えば3月から4月にかけて降る長雨は菜の花が咲く時期の花ですから「菜種梅雨」、5月前半の長雨はちょうどタケノコの旬の時期の雨だから「タケノコ梅雨」、そして5月中旬から6月の長雨は卯の花を腐らすので「卯の花くたし」と表現します。
その後、いよいよ梅が熟す頃になるので、この時期の長雨を「梅雨」と呼ぶわけです。
また春の季語で、いろいろな花を早く咲かせるようにせかす雨の「催花雨」という美しい言葉もあります。
加えて麦秋の頃に降る雨は「麦雨(ばくう)」といいます。
5月の中頃に数日間天気がぐずつくことは毎年のことで珍しくはありませんが、年によってはそのまま天気が快復せずに本格的な梅雨に入ることもあります。
しかし5月といえば、瑞々しい新緑が心地よく、若さと美しさを象徴するような絶好の季節です。
そしてそれが心を和ませ、活力を湧き出してくれます。
だからもう少し好天が続けば嬉しいですね。
コロナの感染対策とともに、体調管理を心がけ元気で夏をお迎えください。