マナーうんちく話535≪五風十雨≫
コロナと寒さがピークを迎えているようですが、そんな中、春が産声を上げました。
2月4日は二十四節気の一つ「立春」で、暦の上では冬が終わって春になる日です。
大変おめでたい日で、《マナーうんちく話》で何度も登場した「立春大吉」という言葉があります。
もともと禅寺で始まった風習だそうですが、完全に左右対称になっているので、奉書紙や半紙のような薄い紙に、「立春大吉」と縦書きに書いて、門や玄関に張っておけば、鬼(邪気)が家の中に入って後ろを振り向いても、家に入ったか?まだか?勘違いして、家から遠ざかるので厄除けになると伝えられています。
節分の「豆まき」は豆をまいて鬼を退散させますが、「立春大吉」と書いたお札は勘違いさせるわけでユニークな厄除けといえるでしょう。
コロナ禍で何かと大変ですが、新しい季節の始まりに、大変縁起の良い風習を取り入れ、これからの一年を前向きに歩むのもお勧めです。
作り方は簡単です。
透けて見えるような和紙を用意し、墨で「立春大吉」と縦に書いて、自分の息を3回吹込み、両面テープなどで、目線と同じ高さ位に、玄関や部屋に貼っておくといいでしょう。
神棚があれば、神棚にお供えする方法もあります。
運気上昇、厄除けのおまじないですから、一年間張っておき、来年の立春に取り替えます。
立春から次の二十四節気の「雨水」までに書いて、張って下さいね。
立春前後が一年で最も寒い時期ですが、それでも日毎に日射しが長くなり、少しずつですが、確実に暖かくなります。
希望が湧いてくる季節ということです。
「立春」という言葉にはそんな思いが込められているのでしょうね。
「春の来ない冬はない」とか「朝の来ない夜はない」、また「雨の後には虹が出る」と昔から言われます。
春の兆しを身体全体で感じ、清々しい気持ちで歩みたいですね。
ところで2月といえば「梅」の季節です。
《東風ふかば 匂い起こせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ》
菅原道真が大宰府に流されたときに詠んだ歌として大変有名ですが、万葉集には梅を詠んだ歌が萩に次いで沢山あります。
それだけ親しまれてきたということでしょう。
まだ寒い時期に百花に先駆け、春を知らせてくれるので「春告げ草」という名前が付けられ、縁起が良い花として重宝されています。
私が主催する講座では、毎年この季節には梅でおもてなしします。
今年もそうなればいいのですが・・・。
ちなみに中国には、晋の皇帝が勉強を始めると梅の花が咲いて、怠るとしぼんでしまったという故事があり、それが日本に伝わったのでしょうか?
日本でも梅が学問に結びつけられていますね。
だから梅をこよなく愛した道真公は学問の神様になられたのでしょう。
また昔から春は東風が連れてくると信じられていましたが、これから一輪ごとに春が近くなります。
《梅一輪一輪ほどの暖かさ(服部嵐雪)》
寒中ですが、心がほっこりする句です。
ところで七十二候の一番初めは「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」で始まります。
東風が優しく氷を溶かしてくれるわけです。
コロナで委縮してしまった心と体も、梅が一輪咲くごとに暖かくなってくれればいいですね。
ちなみに梅は香りを愛でるものです。
「梅に鶯」という言葉は、鶯の美しい鳴き声と、梅の凛とした香りで春を告げてくれる取り合わせで、これも大変めでたい言葉です。
「立春大吉」とともに心にとめて頂き、前向きの気持ちになっていただければ嬉しい限りです。