マナーうんちく話2053《コロナ禍の今、改めて盆の意味と意義を考える》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

4世紀から6世紀にかけてゲルマン民族がヨーロッパに大移動して、定着した事象を「民族大移動」と言いますが、日本でも年末年始と盆には帰省ラッシュが風物詩になっていますね。

年に初春と初秋、つまり正月と盆には先祖の霊が実家に里帰りし、子孫と交流するといわれています。

普段離れ離れになっている家族が、正月と盆に家に集まり、先祖に感謝するとともに、団らんの時を過ごすことはとてもいいことだと思います。

盆に帰省したら是非仏壇に手を合わせたいものです。

ちなみに現存する日本最古の仏壇は、法隆寺の「玉虫厨子」だといわれていますが、庶民の家に仏壇が設置されるようになったのは江戸時代の中頃だそうです。

江戸幕府がキリスト教を弾圧するために、寺院が檀家の死者や先祖を供養するという「檀家制度」ができてからですね。

そして盆になると各家では、先祖の霊を迎えるために桔梗、萩、ほおづきなどの「盆花」を生け、精霊棚やお供え物を用意し、「なすびの牛」と「キュウリの馬」を用意します。

盆の入り口の13日には「迎え火」を焚き、先祖の霊を迎え、ご馳走を備え、盆踊りなどで丁重におもてなしします。

盆が明ける16日には「送り火」を焚き、先祖の霊を送り出すわけですが、なんだかんだと言っても先祖があってこそ、今の私たちがあるわけです。

だからこの期間中は親族が一堂に集まり、先祖と真摯に向き合うことは何にもまして大切なことではないでしょうか・・・。

しばらくオリンピックの話題で盛り上がりましたが、改めて盆の意義について触れてみたいと思います。

〇まずは今の日本の繁栄があるのはご先祖のお陰であることを認識し、感謝の気持ちを抱くことに尽きると考えます。

そしてご先祖に対して、現在の自分のありのままの姿をご覧いただくことだとおもいます。

〇家族みんなの息災を確認し、それを喜び、一家だんらんの時を過ごし、絆を深めることができるとても貴重なひと時です。

〇また親族が一堂に会すことにより、親睦を深めるとともに家計のルーツを知ることができます。

〇ご先祖が里帰りされている盆の期間中は、自分自身の身も心も清らかに保ち、穢れを払い、本来の自分の姿を取り戻すことができる時でもあります。

日本はもともと「和する心」を大切にした国民です。

さらに「礼節の国」でもあり、人にだけでなく、自然に対しても、目に見えない神様仏様に対しても、精いっぱい感謝や思いやりの気持ちを発揮してきたわけですね。

それが文明の発達とともに、日本人としての心の在り方を忘れてしまった気がしてなりません。
とても悲しいことだと思います。

同時に、何もかも恵まれすぎている日本人の幸福度が依然として向上しない原因がここにあるのではと思っています。

理不尽なことがあまりにも多かった今回のオリンピックを見て、その思いをさらに強めた気がします。

その日本人が、本来の日本人らしさを取り戻すのが盆の存在意義だと考えます。

大切に守り伝いたい日本の伝統行事の一つですが、コロナで帰省ができない人が多いのが今年の現状です。

遠く離れていても、改めて、ご先祖に手を合わせてみたいものですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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