マナーうんちく話1764《逝き方の選択とそのお作法・不作法①》
【日本を取り巻く状況及びその対応】
コロナによる自粛生活が1年を経過し、そろそろ限界を感じている人も多いのではないでしょうか。そんな中日本人の平均寿命は着実に伸び続けており、今や百歳人口が8万人を突破し、日本はまさに「人生百歳時代」を迎えています。
一方少子化も急速に進行し、世界が経験したことのない「少子高齢化社会」に突入し、いろいろな意味で世界の注目を浴びているのが現状です。
終戦直後の日本人の平均寿命は先進国でワーストクラスだったのが半世紀余りで、平均寿命、健康寿命共にトップクラスに浮上したのにはそれなりの理由があります。
持ち前の勤勉さで経済を興し、栄養・衛生状態を改良し、医療体制を整え、医療技術を進歩させると共に、国民の健康に対して関心度を高めたからです。
また平和な社会を築いたことも功を奏したといえるでしょう。
一方長寿社会は裏を返せば高齢者の多い社会で、社会保障制度や経済成長という深刻な問題も浮上してきます。高齢者の生きがい喪失や孤立もしかりです。家族と同居していても、日中は一人になる「日中独居」という言葉も生まれました。
人類永遠のテーマである長寿を世界に先駆け達成したということは、経済社会における成功の証であり、世界に誇ることであるにもかかわらず、超高齢社会がネガティブに捉えられることは非常に残念で、なんとかしなければなりません。
一人ひとりが人生百歳時代を自分のこととして捉え、長寿社会にふさわしい個人の生き方改革が必要になるでしょう。そしてそれにより新しい高齢者観や新しい価値観を作り出していくことが求められてくると思います。
【今求められる百歳時代を豊かに生きる力の育成】
かつて人類が経験したことのない時代を日本が先取りしているということは、従来の発想ではハッピーな未来は切り開けないということで、新たな知性や感性が求められるということです。
特にこれからは人工知能等の技術革新に拍車がかかり、新たな時代の到来が予測されますが、急速に社会が変化するということは、それに柔軟に対応できる力が要求されるということでしょう。
【高齢期に向けた生涯学習の勧め】
それを模索する強い見方が「生涯学習」ではないでしょうか。
いくつになっても、人は学んだだけ確実に自己を高めることができるからです。
特に高齢期を迎えると、今まで想像もしていなかった深刻な課題に直面することが多々あります。高齢期を《幸齢期》にする手引書のようなものが多く出回るようになりましたが、実際に歳を重ねてみないと理解できないことが多すぎます。
典型的な例はお金、認知症、生きがいの喪失、孤立などなどですが、これらは例外なく年を重ねるごとに深刻さが増してきます。
だからこそ、学び続けてそれらの課題に向き合う必要があるということです。
遊ぶ、稼ぐ、ボランティア活動なども高齢期を豊かにしてくれますが、それと共に常に学ぶという気持ちは大切にしたいものです。
幸いなことに高齢期は若い頃と異なり自由時間が沢山あります。
加えて現在は大学、カルチャーセンターなども様々なスタイルを駆使して、百歳時代に向けた生涯学習に熱心に取り組んでいます。コロナ禍に対応するためのオンライン講座等もますます普及するでしょう。
しかし、いろいろな設備が整い、交通の便もいい都市部に比べ、中山間部ではそうはまいりません。急激な勢いで高齢化や過疎化が進行し、地域のコミュニティーも薄れ、交通の便も悪ければ予算もマンパワーもない地域も少なくありません。
【強い味方になってくれる地元の公民館】
中山間部で生涯学習を行うにあたって、強い味方になってくれるのは地元の公民館であり、公民館が主催する「生涯学習講座」は大変魅力的でお勧めです。
ちなみに私も過去10数年間において、全国各地の様々な公民館講座の講師を担当させていただきましたが、公民館が発信する多彩な生涯学習は、人の暖かみや町の元気さが感じられます。
現在日本には14000を超える公民館がありますが、特に高齢化や過疎化が進んでいる地域においては、公民館利用者は高齢者が多くなる傾向で、認知症予防などそれに対応した講座も豊富です。
今後地域の公民館には従来の役目に加え、地域の活性化、交流の拠点など、より幅広い役割が期待されてくるでしょう。
こんな時こそ、地域に根差した公民館で自由になる時間を有意義に使い、能動的に学び続け、多くの知識やスキルを吸収し、コロナ禍、及び百歳時代に向けての多様な力を養い、豊かな生活ができたらいいですね。
【なにかとメリットが多い公民館講座】
私は過去10数年間で全国各地の公民館で延べ数百回における講座の講師をお受けしましたが、公民館講座には参加者側からみると多くのメリットがあります。
〇主体的に学べる。
〇営利目的ではないので無料あるいは参加費が安価。
〇毎週、あるいは毎月のように定期的に参加できる。
〇参加者が相互に関わることができる。
〇地域密着型の内容が豊富。
〇学習したことが地域に還元できる。
〇身近な地域で学習できる。等ですが、反面定められた規則に従わなければいけない、場合によっては会場の後片付け等の当番もありますが、デメリットと言えるような内容ではないと思います。
また講師側からすれば、講師料は高いとは思えませんが、地域の人とのつながりができ、その後ご縁が続くことも多々あり、お金では買えない多くのメリットがあることも確かです。私もこれまで数えきれないくらいの素敵なご縁をいただきました。
【「新友」作りに最適の生涯学習講座】
現在日本には65歳以上の高齢者は約3600万人いますが、生涯学習を行っている人は約半数だといわれています。この数字をどう捉えるかはそれぞれだと思いますが、私は日本人の勤勉さが表れた数字だと思います。
つまり多くの高齢者は高齢期を前向きにとらえているということでしょう。
この事は各地で講演活動をしていて常に実感するところです。
ところで高齢期を豊かに生きるには健康、お金、生きがい等色々考えられますが、私の持論は《周囲との良好な人間関係》です。
というのも日本では核家族が進んだ1970年代から1980年代にかけ「孤独死」という言葉が登場し、さらに超高齢社会を迎えた今では、誰とも会わない、近所づきあいをしない、窮地に陥った時に頼れる人がいないなど、高齢者の社会的孤立が大きな社会問題になっているからです。
また今回の新型コロナ禍においても、新たな共助の関係作りが浮上しています。
そうでなくとも超高齢社会は「独居高齢者」が多くなり、常に孤独や孤立が気になるところです。それに加え歳を重ねると今まで仲良かった友人や身内が次第に施設に入居したり亡くなったりで、親友・友人がどんどんいなくなり、本当に寂しい思いを経験します。
そこで新しい出会いを求めて、地域との交流をお勧めするわけですが、この点においても、地元の公民館が主催する生涯学習講座の利用はお勧めです。
しかも現在は人生百歳時代を見据えた、「健康維持や介護予防」「生きがいの創出」「新たな触れ合いの構築」等の内容の生涯学習がとても盛んで、同じ目的や境遇の人が多いので、比較的簡単に「新友」はできるでしょう。
日頃からコミュニケーション力を磨いていただきたいと思います。
このように地域の公民館で、全方位を視野に入れた幅広い交流を心がけることで、多くの「新友」ができることは大変大きな魅力の一つです。
【公民館の生涯学習に参加して得られたメリット】
私は仲間と共に、行政、教育委員会、公益財団法人等の協力を得て地域の公民館で「生涯現役大学」「幸齢者大学」「バラ色未来創造大学」「地域の触れ合いアカデミー」「家庭力アップ講座」等多彩な生涯学習を発信しています。
講座開催数も百回を超え、内容も非常に多彩ですが、いずれも地域創生、及び人生百歳時代を豊かに生きるというコンセプトですから、一言で言えば地域貢献と実益につながるものです。
加えて「出前講座」も設けており、この5年間で講座参加者及び出前講座参加者は延べ3000人を超え、多くの人たちと素敵なご縁をいただき、合計1000通を超えるアンケート、お便り、メール等をいただいております。
中でも講座に参加することで「高齢期の人生が豊かになった」という内容が非常に多く、確かな手ごたえを実感しています。加えて参加者の幸福度も平均よりかなり高い人が多く、豊かさを象徴している気がします。
参加する(学ぶ)目的はそれぞれで、豊かさの理由まで掘り下げることは不可能ですが、講座に参加し、学ぶ機会や学ぶ場を通じて、新たな出会いが得られたこと、さらに自分自身を見直す機会や新たな自分発見につながったことが、豊かになったとの表現ではないかと思います。
そしてこのことはひいては健康寿命増進及び認知症予防に大きく貢献するばかりではなく、高齢化率が4割を超える地域の活性化にも寄与できることです
【私たちが目指す生涯学習の今後の方向性】
生涯学習を通じ学び続けることで、脳の活性化や認知症予防につながることは承知のとおりですが、5年間様々な生涯学習を発信して得られたことは、参加した高齢者の多くは「生きる目的」を明確につかんでいるということです。
生きる目的がつかめたからこそ、日常が豊かになり、健康寿命もそれについてきた感があります。
民ならではの営業センスを駆使して、季節の草花、手作りの茶菓、加えて満身の笑顔でのおもてなしを心がけてきたことが功を奏したと思います。
さらに講座の内容や座談会、ゲーム、歌や踊り、食事、レクレーションや体操等多様な学習方法の提供をしてきましたが、今回のコロナで従来のスタイルは当分の間激変すると思います。
そこでコロナ禍に対応した様式をできる範囲内で模索し、「高齢者ならではの特生
をいかした学習内容」及び、参加者に参画していただき「協働カリキュラムの作成」、
等を検討していく必要性を感じています。
総じて今迄得られた多くのデータをもとに、参加者が地域で豊かに生きていく喜を
増加させる場としての存在でありたいとの思いで、徹底した《楽しさ》を追求したい
ものです。
また新たに「届ける生涯学習」、つまり「出前講座」や「通信講座」も採用します。
過去5年間の講座で、高齢のため会場まで行けない、介護やほかの予定がある
ため時間が取れないなどの諸事情で、参加できない人が多く存在したことを考慮
した、きめ細かい対応です。
日常的な交流のための居場所づくりにも前向きに取り組み、ユニークなスタイルの
《コミュニティーカフェ》の併設も視野に入れています。
スタッフ全員は手弁当で、報酬は「参加者の笑顔」でのやりくりは何かと大変で、で
きることは微々たるものですが、反面得られる充実感、満足感は大きなものがあり
ます。今後も無理なく、楽しく、前向きに取り組めたらうれしい限りです。
※過去5年間に発信した「講座便り(5年間のあゆみ)」を作成しています。
ご関心のある方に先着5名様にお届けいたします(無料)。ご連絡ください。
令和3年梅見月
ハッピーライフ創造塾 平松幹夫
(マナー講師)
(生涯学習インストラクター)
(シニアライフアドバイザー)
(健康生きがいづくりアドバイザー)