マナーうんちく話486≪大切にしたい序列のマナー≫
世界には多くの言葉がありますが、日本語の特徴は美しさと難しさが同居している点ではないでしょうか。もしかしたら、難しいから美しいのかもしれませんね。
そして美しい言葉の基準は、正確な言葉遣いにあるのでしょうが、言葉のセンスを磨くことが大切だと思います。多くの言葉を知ることも必要でしょう。
ちなみに広辞苑には20万語以上登録されていますが、美しさと難しさが同居している日本の敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語、美化語があり、それを立場や状態に応じ巧みに使い分けるとなると、もはや至難の業でしょう。
それは別として、今回のコロナ騒動で沢山登場した横文字には苦労します。
もともと従来の災害警報などは「大雨注意報」、「暴風警報」、「避難指示」などと高齢者にもわかりやすいのですが、今回の新型コロナに関しては、なぜ難しい横文字が多いのでしょうかね。「ソーシャルディスタンス」「オーバーシュート」「ロックダウン」「クラスター」「東京アラート」等など・・・。
コロナ禍で改めて個人間の情報格差が問われていますが、その前にまず、どんな人にもわかりやすい言葉での情報発信が求められると思うのですが・・・。
今回は日常生活でよく使う敬語「さん」と「さま」の用い方に触れてみます。
普通人を呼ぶときに、名前のまま呼び捨てにしないで敬意の表現を付けてよびますが、それが「敬称」です。
封建時代は多くの身分があったので、当時はそれにふさわしい様々な敬称がありました。しかし今の民主主義の時代は、誰にでも共通する敬称が必要になってきます。それが敬称の標準の形として尊敬語の「さん」で、広い範囲で共通します。
「さん」は現在敬称の標準になっているので、誰でも「さん」で読んで大丈夫ということです。つまり、社会的に身分の高い人、大金持ち、学者、大臣などでも、その役職を離れ一般の場合は、その姓に「さん」をつけて呼べばいいということです。
「さん」は敬称の標準ですから、先輩も後輩も老若男女も、その姓や名前に何さんをつけて呼べばいいとおもいますが、ケースバイケースで迷うこともあります。
また「さん」は〈あなたとさらに仲良くなりたいという思い〉で「親しみ」を込めて呼ぶにはいいと思いますが、相手や時と場合により軽々しいともとらえられるので、「さん」は相手の立場に立って慎重に使用してくださいね
一方「様」は話し言葉の敬称として、「さん」より改まった場合に使用します。
「叔父様」「叔母様」などの用い方は女性で、男性が呼ぶ場合は「おじさん」「おばさん」がいいでしょう。
また「お客様」「お医者様」という呼び方もあります。
「お子様」の場合は年少の子どもに用い、成人したこどもは「お子さん」です。
「さん」も「様」も、お互いの立場や親密度にもよるということでしょう。
例えば「お客さん」と呼ぶか「お客様」と呼ぶかは、それぞれでしょうが、「さん」のほうが親しみは増すと思います。しかし取り方によっては軽い感じなになります。
使用する人の判断で使い分けるしかありません。
「お客様」から、親しくなれば「お客さん」、さらに客の立場としては、自分の名前で呼ばれるのは、うれしいものです。
2000年に医療、介護、福祉、教育の世界にも市場原理が導入され、病院でもそれまでの「〇〇さーん」から、急に「〇〇様」になった記憶はまだ新しいですが、これは意識が変わったからでしょう。
ところで日本の敬語が今のようにややこしくなったのは、江戸時代の武家社会からだといわれています。それまでは身分で使い分けていた敬語も、武士の世界では、身分の高い武士も低い武士も、互いに尊敬しあうべきという考えがあったようです。
一方町人社会でも三味線、お茶、お花、小唄などの習い事の世界でも、師匠と生徒でのやり取りが発生し、敬語がさらに複雑化するようになりました。
厳格だった武家社会の敬語は別として、今は難しい文法より、気持ちの持ち方が大切だと思うのですが・・・。
しかし不必要に、横文字を羅列するより、日本語を大事にしたいですね。