マナーうんちく話139≪贈り物の頂き方のマナー≫
あくまで時代劇での話ですが、江戸時代の武士のファッションと立ち居振る舞いは大変美しいと感じます。
当時の着物姿の女性もそうでしょう。
江戸時代のことわざ辞典に「たてば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉があります。※《マナーうんちく話536「たてば芍薬 座れば牡丹 あるく姿は百合の花」》を参考にしてください。
着物姿の女性も立派ですが、江戸幕府の高官である高級武士の服装も態度も素晴らしいですね。
まさに凛とした美しさでしょう。
もちろん今の世もそうですが、出世すれば交際費など必要経費は膨らみます。
それなりの賄賂はあったのでしょうが・・・。
ちなみにヨーロッパの騎士の「立ち姿の美しさ」に対抗すれば、特に日本の武士の座った姿、さらに立ったり、歩いたりする姿は実に美しいと思います。
今では自由になりすぎたせいか、「立ち居振る舞い」といえばとても窮屈に聞こえるかもしれませんが、日本人として美しい姿勢を保つことはとても大切です。
もともと日本人は自分を律することや他人への思いやりを大切に考え、それが「作法」という行動の美学になったのではないでしょうか。
挨拶にしても昔の「立礼」「座礼」「行き会いの礼」などは大変美しい動作です。
特に江戸時代に確立された「正座」の美しさは格別で、相手に対して敬意を払う気持ちをとても美しく表現しています。
また畳の文化を有する日本では、部屋に入る時にも座った状態で襖を開け・閉てします。
では、なぜあえて座って開け閉てするのでしょうか?
和室では相手も座った状態です。
そこに入るわけですから、こちらが立った状態で入れば「相手を見下ろす」ことになります。
武士が刀を抜いたままで入れば相手は応戦できません。
そんな相手に対して、きちんと礼を尽くすには、当然こちらも座った状態にするわけです。
とても優雅で美しい伝統的な作法ですが、今ではすっかり影をひそめてしまいましたね。「令和」という元号に移行し、万葉の文化が脚光を浴びていますが、恐らくこのような伝統的作法が蘇ることはないでしょう。
私が主催する「和の礼儀作法講座」や「和食のマナー講座」では極力触れることにしていますが、最近は膝が悪い方が多くなりケースバイケースになりました。
しかしこのような作法はひとえに相手に対する「思いやりの心」を具体的に表現したもので、日本が世界に誇る素晴らしい文化です。
日本の住居に畳、襖、障子、床の間がある限り、それに伴う美しい作法は何時までも残したいものですね。
次回に続きます。