マナーうんちく話1840《先人に学ぶ「衣替え」の意味と意義》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

日本は四季が豊かなせいか、季節により着物の材質や仕立て方、さらに柄なども変化します。

昔は今のように誰もが物質的な豊かな生活を謳歌できるわけにはいきませんが、高貴な人や武家階級の人は季節ごとに衣装や調度を替えました。

もちろん旧暦の話ですが、平安貴族は宮中行事として4月1日から9月末日までが夏服で、10月1日から3月末日までが冬服になっていたとか・・・。

それが江戸時代になると様々な文化が芽生え、さらに衣食住が大変豊かになります。それに応じ江戸幕府においては、4月1日、5月5日、9月1日、9月9日の4回も衣替えがあったようです。

目的はその季節ごとに天気や気温が変化するので、気候に応じて快適な暮らしができるようにするためですが、その都度、布地の点検などを行い、きめ細かな手入れを行いました。

今のように大量生産、大量消費の時代ではなく、着物を一着作るには大変な労力が必要だったので大切にしたわけですね。

また「いいものを長く着る」習慣も根付いていたのでしょう。

そして明治になって公務員や学校などで制服が普及してくるに伴い、6月と10月には衣替えを行う習慣が生まれたようです。

じゃなぜ一斉に着るものを替えるのでしょうか?

個々の価値観が多様化した現代ではピンとこないかもしれませんね。

ただ食べ物もそうですが、季節を先取りするのは粋ですが、特に衣装の場合は過ぎた季節をいつまでも引きずるのは、あまり格好いいことではないでしょう。

もともと日本人は、周囲の人に不快感を与えないことにとても敏感な国民で、だから同じものを着ることで、周囲の人と歩調を合わせ、協調性を保ったわけです。

今クールビズ全盛です。
自由や自分らしさ加えて物質的豊かさを謳歌して、お洒落を楽しめることは良いことですが、TPOに応じて相手目線に合わせることも必要だと考えます。

2005年にスタートしたクールビズの本質は、自分が快適になるという視点ばかりではありません。エアコンの設定温度を下げ、地球の環境に配慮する取り組みです。

そのためには「軽装も良いよ」というのがクールビズでしょう。

昔の衣替えと異なり、今のクールビズは、紳士服市場の活性化や労働環境の在り方には功を奏したかもしれません。ただ温室効果ガス排出量の削減にどのように役になっているかはあまり見えてこない気がしますがいかがでしょうか?

市場を活性化するためのクールビズであれば、営業戦略として自分が快適になるという視線は必要ですが、周囲の人にいかに好感を与えるかも大切です。

つまり相手目線も大切ということです。

「武士は食わねど高楊枝」とまではいかなくても、ある程度自分を律し、厳しい規律を持つことも大切にしたいものですね。

令和という時代を、本当に心寄せ合って美しく生きる時代にしたいのであれば必要なことかもしれません。

ちなみにビジネススーツの原点はもとをただせば軍服だったようですが、学校や職場で制服があるのは、組織全体の一体感を生むことで、それを着用する一人一人が自分を律するためでもあります。

制服に恥じない行動を求められたのでしょう。

自由というものは、そのような格式や規範の中に存在するのではないでしょうか。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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