まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
日本の四季の美しさは世界中の人が羨ましがるところですが、春夏秋冬が明確に分かれている日本では、季節に対する感性が大変豊かです。
また四季の移ろいには大変敏感で、明治の初めまでは今のように一年12か月を数字ではなく、その季節に相応しい言葉で表現していました。
今でも昔から手紙でも、四季折々の情景を醸し出すような挨拶で始めるのが習わしのようになっていますね。
ただ残念なことですが最近は国際化が進展したせいでしょうか、欧米の文化に押されがちで、日常生活で使用される機会がめっきり減少しました。
時候の挨拶そのものがこのコラムでも度々登場した「和風月名」や「二十四節気」に基づいているので、現在の季節感とは概ねひと月のずれが生じることもその原因の一つでしょう。
平成最後の4月になりましたが、4月は旧暦の和風月名では「卯月」といいます。
「卯の花」が咲くから卯月です。
では卯の花をご存知でしょうか?
いつ頃に咲きますか?
唱歌の「夏は来ぬ」で《卯の花のにおう垣根に・・・》と歌われているように、初夏を感じさせてくれるユキノシタ科のウツギの花です。
私が住んでいる岡山県の中山間地期ではいつもゴールデンウイーク頃に白い小粒の花を咲かせます。
また「う」は「初」とか「産」という意味もあり、一年の始まりを表しているという説もあります。
そういえば日本では官公庁も学校も企業の多くも4月からが新年度になりますね。
あちらこちらで入社式や入学式が執り行われるお芽出度い月でもあります。
では先進国の多くは9月が新年度の国が多いのに、日本はなぜ四月になったのでしょうか。
一年前のコラムでも触れましたが、「年度」とは特定の目的のために規定された一年間の区切りで、会計年度や学校年度があります。
そして日本では明治19年(1886年)から会計年度は4月1日から翌年の3月31日になりました。
政府機関がこのようになると、学校運営のために政府から予算をもらうために、学校もこれに倣った方がいいし、企業もお上の通りにした方が何かと得ですね。
ちなみに政府が会計年度を4月にした理由ですが、これは日本の稲作と大きなかかわりがあります。
当時の日本の税収の大部分は農家の米です。
というのも明治初期の日本人の大部分は農業に携わっていたからです。
農家は春に田植えをして秋に米を収穫します。
この米を「税」として国に納めるわけですが、米で納めるのではなく、米を売ってそのお金で税金を納めることになります。
そうなると四月頃になるわけですね。
また日本人は「桜」が大好きです。
入学式や入社式といった芽出度い門出は「桜と共に」というのがすっかり定着しています。
いまさら他の先進国に合わせて、残暑が厳しい9月に入学式や入社式というのもピンときませんね。
元号が替わっても、国民の圧倒的多数が仏教と神道を信仰し、米を主食にしている日本ならではの文化はいつまでも大事にしたいものです。