マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
朝夕すっかり涼しくなり秋の深まりが感じられます。
あまり聞きなれない言葉ですが10月23日は、秋も深まり霜が降りるころといわれる「霜降」です。
二十四節気の一つですが、北海道地方では当てはまるかもしれませんね。
ただ私が住んでいる「晴れの国」岡山ではまだかなり先です。
ちなみにその年に初めて降りる霜のことを「初霜」と呼びますが、概ね12月前後です。
しかし「秋の日は釣瓶落とし」といわれます。
日が暮れるのは大変早くなり、朝夕の冷え込みが厳しくなります。
「灯火親しむ秋」ですから、秋の夜長をゆっくり楽しむのもお勧めです。
本を読んでもいいし、美酒を片手にグルメを楽しむのも格別でしょう。
特に食欲の秋は老若男女を問わず楽しむことができます。
旬の味覚が豊富ですから、美味しく食べて、元気をつけて、日本の秋を探求するのもいいですね。
そろそろ所によっては紅葉が見ごろになってきますが、紅葉に関するコラムは既に多く書いていますので今回は《秋の夕暮れ》に触れてみます。
秋の夕暮れは格別です。
秋の情趣といえば、月と紅葉と夕暮れでしょうが、秋の夕暮れは夏の夕暮れのようにはっきりした色ではなく、何となく寂しさが漂うような微妙な色彩の落ち着いた感じがします。
先人の感性は大変豊かで、春の夕暮れにもいろいろな名前をつけましたが、秋の夕暮れも見え方や時間により独特の名前が付けられています。
例えば夕焼けの光に照らされて物が輝くことを「夕映え」といいます。
日が沈んでしまっても、山の頂や雲に光が残り輝いている光景は「残映」です。
さらに「斜陽族」という言葉もあります。
太宰治の「斜陽」から生まれた流行語で、第2次世界大戦後、日本の社会は急激な変化をとげ、それによって没落した上流階級の人々のことですが、本来の意味は日が傾くことです。
また新古今和歌集には「秋の夕暮れ」を結びとした有名な3首の和歌があります。
《さびしさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ》(寂蓮)
《心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ》(西行)
《見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ》(定家)
いずれも心にしみる名歌です。
くれそうでなかなかくれないのが春の夕暮れですが、これに対してくれぬようですぐにくれるのが秋の夕暮れです。
その分夜が長くなるわけですが、秋の夜長の落ち着いたひと時をゆったりとお過ごしください。