マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
日本の四季の美しさは世界中の人が羨ましがるところですが、四季のほかにも日本には一年を24に分類した「二十四節気」があり、さらにそれを3等分した「七十二侯」があります。
天気のことを「気候」と言いますが、これは二十四節気の「気」と七十二侯の「侯」の組み合わせです。
先人は四季や二十四節気などが織りなす、自然のほんの些細な変化にも豊かな感性を働かせたわけですが、その節目になるのが、「春分の日」と「秋分の日」です。
昼と夜の長さが同じになる日で、太陽が真西に沈みます。
そしていにしえの日本では、極楽浄土は西にあると信じられていたので、この日は「先祖の霊と最も近づける日」と信じられていたのでお墓参りをします。
節目になる日はまだあります。
昼が最も長く夜が最も短い「夏至」と、昼が最も短く夜が最も長い「冬至」です。
12月22日は冬至です。
古代はこの日を「一年の始まり」と捉えた時代もあります。
一年で一番夜が長いということは「最悪の日」です。
しかしこの日を境に、次第に昼が長く、夜が短くなっていくわけですから、冬至はスタートの日としても相応しい日だと思います。
今のように照明器具も暖房器具も発達していれば、寒さが厳しくても、夜が長くてもそんなに困りません。物が豊かですから食料も十分あります。
しかし物が貧しく、食べ物も、照明器具も、暖房器具にも恵まれない昔は大変です。
寒い、食べ物が少ない、加えて暗い日となれば最悪です。
かの有名な道元は「冬雪冴えて涼しかりけり」と呼んでいます。
極寒の冬空を舞う雪、そして身が縮んでしまいそうになるくらい吹き付ける寒風。
それに加えて食べ物がなく、暗いとなれば想像を絶する辛さです。
だから「再生の儀式」を行うわけです。
昔の人は太陽を神様とみなし、生命の営みを太陽に求めていたので、太陽の力が最も弱くなる冬至に儀式を執り行い復活を祈ったわけですね。
これはほぼ世界的に共通しているようです。
日本ではこの日にカボチャ(ナンキン)のような「ん」のつく食べ物を食べ、「ゆず湯」に入ります。
ではなぜ「ん」のつく食べ物を食べるかといえば、冬至が一年の締めくくりとして捉えたので、仮名の最後の字である「ん」のつく食べ物になったようです。
ちなみに、にんじん、かんてん、ぎんなん、れんこん、きんかん、うどん、そしてなんきんのことを「冬至の七草」といいます。
そしてゆず湯につかりますが、この理由も単純です。
一番はゆずが旬だからです。
今ではゆずは既に収穫されているところがおおいのですが・・・。
加えて、語呂合わせを先人は好んでいたので、「柚子」を「融通」に掛け合わしたようです。
柚子を食して融通の利く人になろうとしたわけですね。
恐らく風呂屋を営んでいた人が営業戦略として広めたのでしょう。
いつの世も商魂たくましい人はいるものですね。
さらに柚子の木は樹齢が長いから「柚寿」にあやかったという説もあります。
いずれにせよ寒さが厳しいこの時期に、縁起の良い食べ物を食し、縁起の良いゆず湯につかり、来る春をハッピーにしたいという考えは現代人にも通じるようですね。
陰が極まり、陽が復する「一陽来復」と参りたいものですね。
今年も残りわずか。
無理をしないで、元気でお過ごしください。