マナーうんちく話521≪お心肥し≫
今のように物が豊かでなかった頃、日本人は物をとても大切にしてきました。
大量生産、大量消費の今では考えられないかもしれませんが・・・。
秋晴れの空気が乾燥した日に、書物や衣服を外に出して虫干しすることを「曝涼(ばくりょう)」と言いますが、昔はどこの家でも行われていたようです。
夏や秋の天気がいい日に、風を通してカビや虫が湧くのを防いだわけです。
昔は当然今のように化学繊維もなくすべてが天然ですから、余計に神経を使う必要があったのでしょう。
ダメになる前にきちんと手入れをして、少しでも長く持たせるための生活の知恵だったわけですね。
物を大切にしてきた先人は同時に人も大切にします。
自然や目に見えないものに対してもそうです。
東京オリンピック招致委員会で日本の「おもてなしの心」が世界中で話題になりましたが、どうやら昔からその遺伝子は根付いていたようです。
10月には出雲大社に全国津々浦々の八百万神(やおろずのかみ)が出張されるわけですが、折角お越しいただいた神様をおもてなししなければなりません。
だから出雲地方では、神様をおもてなしする様々なイベントが目白押しになります。
但し旧暦で行うところもあれば、新暦で行うところもあるようですから事前にチックしてください。
世界が絶賛した日本のおもてなしの心は、実は神様をお迎えする神事の中に明確に表現されていると思います。
そして目に見えない神様をおもてなしするという日本人ならではの精神文化は、「お祭り」や「しきたり」として脈々と現代にも受け継がれているわけですね。
その時、その場所で、心を込めておもてなしすることに全神経を使う、大変粋な文化でと言えるのではないでしょうか。
このコラムでも「おもてなしの作法」について、ハード面とソフト面について触れておりますが、いずれにせよ神様をおもてなしする気持ちで真心こめることが大切です。
今、官公庁でも民間企業でも「おもてなし」という言葉が氾濫していますが、いずれにせよおもてなしという表現をする以上は、いい加減なことはやめて頂きたいものです。
日本を代表する一流企業の不祥事が問題になっています。
毎回のことながら「大変遺憾に思います」「再発防止に努めます」の常とう句でその場を乗り切っていますが、一向にこのような不祥事が後を絶ちませんね。
今回も「またか」という思いですが、物づくりの世界ではあってはならないことだと思います。
特に大企業ともなれば取引先は海外にも及びます。
長年日本人が培ってきたモノづくりやモテナシの精神が地に落ちることにもなりかねません。
改めて世界が称賛した日本のこれらの文化をみんなで考えたいと思うわけです。
「お客様は神様です」という有名な言葉があります。
「神様をおもてなしする気持ちでお客様に接することが大切だ」ということです。
サービスを「提供する側」と「受ける側」には上下関係はないと思いますが、特に提供する側は真心こめて提供したいものですね。