マナーうんちく話494≪和顔愛語≫
クールビズという言葉が産まれて早10年以上が経過しました。
エネルギーの無駄を省いて自然と優しく接していこうという目的でスタートしたのが始まりで、夏でも室温を28度に設定して、暑さ対策をしてきたわけですが、もともと28度という温度は何が基準になったのでしょうか?
正直真夏に室温が28度と言えばお世辞にも快適とは言えないでしょう。
だから「服装をラフにしてもいいよ」というお上からのお墨付きが下され、クールビズ商戦がスタートしたと思います。
洋服、履き物、小物を始め多種多様なクールビズ商品が開発され、商戦がブームになりましたが、今年もその季節になりました。
ところで原発事故は人や自然にも大打撃を与えたわけですが、その後始末も完璧になされないまま原発が稼働しています。
そんな状況下におけるクールビズにどんな意味があるのか疑問ですが、それはさて置き、「扇子」を持つ機会も多くなると思います。
そこで今回は扇子に込められた多彩な意味に触れておきますので参考にして下さい。
扇子は生粋のメイドインジャパンですが、その歴史は古く平安時代には登場しています。
最初は持ち歩くメモ帳的な意味や女性の装飾品という意味も強かったようですが、扇いで風を送り、涼をとる道具としての役割も有しています。
また邪気を払うという意味もあったようで、儀式には付き物だったようです。
能や舞い、そして茶道では必要不可欠な道具ですね。
扇子が産まれた頃は、貴族や神官のように特権階級の持ち物でしたが、鎌倉時代になると庶民でも持てるようになり、江戸時代には扇子が重要な産業になっていたそうです。
今では和装にも洋装にも用いられますが、見た目もお洒落な小道具ですね。
だからこそ、そこに込められた意味を正しく理解し、スマートに使いこなしたいものです。
和の礼儀作法にも良く登場しますが、中でも和室で正座して挨拶を交わす時には必要になります。
和室での挨拶、つまり座礼の時には先ず自分の前に扇子を置きますが、これは扇子が「結界」の意味を持ちます。
仏教用語で「聖域」と「俗世」を分ける境界線という意味になるわけです。
この説明では良く解からないと思いますが、さらに平たく言えば、扇子を置いて、扇子より手前が自分の位置で下座を意味します。
扇子より向こう側が相手方の位置で上座を意味します。
つまり自分を下げて、相手を立てるということです。
立礼の時にも扇子をお臍のあたりで、両手で持ちますが、此れも「自分がへりくだっている」という謙虚な姿勢を意味します。
また扇子は「末広」とも呼ばれ、広く広がるので、扇子を持つことで「あなたと親密な交流を深めたい」という意味にもなります。
これからクールビズアイテムとして扇子を持ち歩く機会が多いと思います。
そんな中スピーチをする機会が有れば、扇子を両手に持ってスピーチをするのもお勧めです。
扇いで風を起こす小物として持ち歩くだけではなく、扇子を良い意味で活用して下さい。
ちなみに、風を起こす目的で、人前で扇子を使用する際は、左右に仰がないで、下から上、つまり腹の方から顔に向けて扇いで下さい。扇子の風を嫌う人もいますので・・・。
さらに「満つれば欠ける」と言われます。扇子を全開したら跡が有りません。
だから扇子は全て開かないで、少しだけ閉じた部分を残して下さいね。