マナーうんちく話604≪武士は食わねど高楊枝≫
原発事故で非難してきた子どもへのいじめが報じられています。
もっとも止めて頂きたいいじめで心が痛みます。
こんな時こそ他者に対する思いやりの心やおもてなしのマナーを素敵に発揮して頂きたいものですね。
素敵に発揮するということは、如何にもしていますといった大袈裟な素振りではなく、さりげなくスマートにすることです。
これがまさに粋な計らいで、「生き生きと実行する」意味に繋がります。
このコラムで何度も「江戸しぐさ」にふれました。
江戸しぐさは公式記録として残っているのではなく、言葉で伝えられてきたものですから確証はないようですが、現代人が参考にするべきものが多々あります。
なぜなら、江戸しぐさは商いをする人が「街が平和でなおかつ商売が繁盛するように」色々な角度から、良好な人間関係づくりを模索したものだからです。
その中に「三脱の教え」があります。
3つの事を脱ぐ教えとは「年齢」「職業」「地位や立場」のことを、初対面の時には聴かないようにすることです。
私たちはとかく人付き合いをする時には「損得」を計算し、得になるような肩書や地位、仕事の内容などを気にする傾向にあります。
しかしこれでは先入観を持つことになり、人を正しく判断することができません。参考程度にはなるかもしれませんが、これとその人が持つ人柄とは関係ありません。
私もクレームなど受けて謝罪に伺う時、先入観が先走り大きなミスをしたことが何度もあります。
その人の持つ人柄と、経済力、社会的地位、職業、年齢、学歴は殆ど関係ないでしょう。
今は物が豊かで便利でしかもあらゆる情報が瞬時に手に入ります。
しかし裏を返せば、それだけ多くの情報を的確に見抜く力も必要だということです。
選択する力や人を見抜く力が非常に大切になってきたということです。
この情報はどのような目的で、どこから発信されているのかについて考えることも必要でしょう。
年齢や社会的地位や経済力で人を判断する事が出来ない以上、一度色眼鏡をはずして、学歴、職業、経済力などの情報抜きで、どのように相手と接したらいいのか考えてみるのも大切です。
本質を見極める。
これは自分磨きにも、人育てにも、学ぶことが多い江戸しぐさの一つです。
先入観なくても人と気楽に交流が出来、その結果損得勘定では得られなかった人脈が出来、最終的には人を見抜く力が自然につきます。
私は33年間ホテルでの接客の仕事を通じてこの事を学びました。
ちなみに上から目線で人を見るには大変な時間を要しますが、下から目線で人を見れば簡単に見えます。
私はその人の人柄を見るために、一度食事をすることをお勧めしています。
席に着く時の立ち居振る舞い、箸使い、係の人への感謝の言葉、食べ物の好き嫌い、食べ方、会話から発せられるボキャブラリー、食事が終わった後の食卓の様子、支払いの時の態度などなどを総合的に判断すれば、先ずその人がどんな人か解ります。