マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
「冬来たりなば、春遠からじ」。
冬の気配が里にも山にも感じられてくる頃です。
最近は先物化が進んでいるせいか、10月31日のハロウィーンデーが過ぎると急にクリスマスのディスプレーになるので、山や里より街の方が、冬に様変わりするのが早いですね。
11月7日は二十四節気の一つ「立冬」です。
紅葉が美しい季節ですが、それもつかの間で、間もなく木枯らしに吹かれ、木々の葉が落ち、冬枯れの様子が目立ってきます。
まさに「山眠る」ですね。
ちなみに暦の上では立冬から2月3日の立春の前の日までが冬ですが、冬の語源は貝原益軒の「フユは冷ユ也」だそうです。
万物が「冷(ひ)ゆる季節」だから、その「ひゆ」が「ふゆ」になったという説が有ります。
さらに「震(ふる)う」が変化して「ふゆ」になったという説もあります。
寒くなれば体に震えが生じて来るので「ふるう」から「ふゆ」というのも頷けますね。
さらに「振るう」から発生したという説もあります。
この説には、非常に興味深い意味が有るようです。
「振る」には「密着する」という意味が有り、寒くなれば外部から侵入してきた魂が体に密着して、暖かくなる春まで居続けたそうです。
つまり外からやってきた魂が身体に「振る」季節だから「ふゆ」になったということですね。
神社にお参りする時に、手水舎で口と手を清めたら祭殿の前でお賽銭を収め、次に鈴のついた太い縄を思い切り振って鈴を鳴らします。
これは神様の霊を呼び起こすためとされていますが、それと同じような意味が有るのでしょうか。
冬になれば木枯らしが吹きますが、それに降り起こされることで魂が活性化し、元気を蓄え、やがて来る温かい春に備えるという前向きな解釈が出来そうですね。
また「ふゆ」は英語では「winter」ですが、「wet」「water」「wash」等に通じ「雨の季節」「湿った季節」ともいえそうですね。
そして冬は「終わりの季節」という意味もあるそうです。
冬は寒いので作物がとれません。
そこで秋に採れた大根や柿などを糸で結んで軒下などにつるして保存しておくのですが、その糸でくくった食べ物が氷る季節は最後の季節と解釈されたのでしょうか?
「終」という漢字は「糸」と「冬」から成り立っていますね。
このように「ふゆ」には様々な説が有りますが、寒くて暗い冬は昔の人にとっては非常に厳しい季節であったことは確かです。
だからこそ春が来る喜びが大きかったわけですが、暖房器具や照明器具にも恵まれ温かい家で鍋を囲み、ウィンタースポーツが楽しめる今の時代に生まれたことに感謝ですね。
当分は厳しい寒さに向きあうことになりますが、しかし冬がくれば春が必ずやってきます。
If winter comes、can spring be far behind?
《冬来たりば 春遠からじです》です。
今年も色々なことがありましたが、北風にも、雪にも負けず、身も心も元気でご活躍下さい。