マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
突然ですが日本の国花をご存知でしょうか?
その国の国民に最も愛され、その国を象徴する花を「国花(floral emblem)」と言いますが、日本では恐らく桜や菊をイメージする人が多いと思います。
実はどちらも日本の国花なのです。
急に秋の深まりを実感するようになりましたね。
そして秋を美味しく彩る食べ物に加え、「菊」が見ごろを迎えました。
9月9日は「重陽の節句」で、別名「菊の節句」と言われますが、現実には菊が見ごろを迎えるのは丁度今頃ですから、旬の菊を使って「菊酒」や「菊枕」を楽しむのもお勧めです。
菊枕は菊の花びらを乾燥させて詰め物にして作るわけですが、もとは女性が恋しい男性に贈ったと言われています。
バレンタインデーの日本版とでもいいますか、先人もなかなかやるものですね。
菊枕をして寝ると、寝床に高貴な菊の香りが漂い、恋する人が夢に現れるそうです。
天高く晴れ渡った空はそれだけで大変気持ちがいいですが、それを「菊晴れ」と表現した先人はさらに、「被綿(きせわた)」という風流な文化も作りました。
先日は二十四節気の「寒露」に触れましたが、平安貴族は菊に降りた冷たい露で体をぬぐい、邪気を払い長寿を祈念したそうです。
ところで10月10日は「体育の日」であり、全国津々浦々多彩なスポーツイベントが華々しく開催されていますが、菊の香る時期でもあります。
先人の風流に思いをはせてみるのもいいですね。
そしてこれからは夜が長くなり日照時間が短くなります。
気温も下がってきます。
こうなると花がめっきり少なくなってくるわけですが、そんな中菊は香り高く咲いてくれますのでひときわ目立ちます。
だから梅、竹、蘭と共に「四君子」といわれています。
ちなみに菊の語源は「極まる」で、一年の最後に咲く花という意味ですが、その気品に満ち、凛とした菊の花姿は日本の国花に相応しいと思います。
皇室の紋章になっていますが、これは鎌倉時代初期に後鳥羽上皇が菊を好んだからと言われています。50円玉にもデザインされ、競馬でも「菊花賞」がありますね。
このように菊は大変お目出度い花で「菊を飾ると福が来る」と言われていますが、仏前にもお供えするので縁起が良くないと嫌う人もいます。
従って小菊を御見舞に持参するのはお勧めできません。
時代が変われば感性も変わります。
私は、菊は「高貴」「高潔」という花言葉に象徴されるように、日本人の心の在り方を伝える伝統的な美と文化だと思っています。
結婚式のブーケにも使って頂きたいと思うのですが・・・。