マナーうんちく話1291《「6月無礼」から「新涼」へ》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

炎天下に外を歩いていると、強い日差しに耐えきれず、軒下や木々の下で涼をとることが多々あります。
汗だくの状態でほっと一息というところでしょうか。

ところでこの暑さですから、日常の会話でも「汗だく」という言葉を頻繁についますが、この「だく」というのは、どのような意味が有るかご存知でしょうか。

「沢山」の意味と捉えている人も多いようですが、「だくだく」の略だそうです。
すなわち「汗だく」という意味は、「汗だくだく」ということなのですね。

ちなみに、全身が汗にひどく濡れた様を表現する言葉に「汗まみれ」がありますが、漢字で書けば「汗塗れ」だそうです。

日本語は世界的にも美しいと言われますが、実に難しい面も多々あります。
そして最近すっかり定着してきた言葉に「クールビズ」があります。

誰しも知っている言葉ですが、これをあえて古風な言葉で表現するとしたらどうでしょう?

今では殆ど日常で使用する事はありませんが「6月無礼」という言葉があります。

先日久しぶりにホテルでランチをとりましたが、レストランのスタッフはポロシャツでした。

クールビズが議会でも学校でもまかりとおる時代ですから、誰しも不思議に思うことは無いでしょうが、「6月無礼」とは、まさに「酷暑の頃は服装を略してもとがめない」という意味です。

但し旧暦の話ですから、旧暦6月と言えばちょうど今頃でしょうか。

日本は大変蒸し暑い国ですから、クーラーも扇風機も無かった時代は本当に大変だったと思いますが、「6月無礼」という言葉は、時代の香りと共に思いやりの心が伝わってきそうです。

6月無礼や衣替えということばがあるのに、あえてクールビズという言葉が流行した背景には色々なものが有りますが、流行り最低限の規律は守らなければいけないと思います。

打ち水に風鈴・・・。
先人たちが、眼や耳にも涼しく感じられるように工夫を凝らしてつくりあげた文化は、キチンと受け継ぎたいですね。言葉も勿論です。

私が住んでいる山間の地域では、日中は都会と同じで厳しい暑さが続いておりますが、朝晩の風にふと、秋を感じることが有ります。

秋になって始めて感じる涼しさを「新涼(しんりょう)」といいます。
加えて秋の風は「白風(は工夫)」と呼ぶことが有ります。

6月無礼もいつまでも続きません。
物言わぬ風、眼に見えない風に、かすかに秋の気配が漂い始めました。
そろそろ襟を正したいものですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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