まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
しっとりとした雨の風情にも慣れてきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
梅雨は中国、韓国、北海道を除く日本等に見られる雨季ですが、良いこともあれば、悪いことも多々あります。
良いことは、なんと言っても命を繋ぐ水の確保です。
特に梅雨が終わり、盛夏期になった時の飲料水、生活用水、工業用水、農業用水の確保です。
悪いことは大水による自然災害です。
これからは頻繁に大雨注意報、大雨警報が発令されますが、洪水のみならず土砂災害等にも備えが必要になります。
降るべき時に、降るべきものが降らなければ、生活そのものに支障をきたしますが、降り過ぎても困ります。何事も程々が良いですね。
ところで6月10日は暦の上では「入梅」ですが、ご存知でしょうか?
只今梅雨の真最中ですが、暦の上では6月10日が梅雨に入る日です。
ちなみに「入梅」とは梅雨入りの頃に設けられた「雑節」の一つです。
昔の人は生活の基盤になる米づくりに非常に熱心に取り組みました。
そこで少しでも生産性を高めようと色々と工夫を凝らしますが、中でも田植えの時期を的確に把握することはとても大切なことです。
だからその日取りを決めるために、長年の経験から、二十四節季の「芒種」から数えて6日くらいたった日を「入梅」として暦に設けたわけです。
なお「雑節」とは、季節の移り変わりをより的確に把握するために、設けられた暦日だと認識すればいいでしょう。
二十四節季を補足するためのものと捉えて頂いても結構ですが、「入梅」の他に、お馴染みの雑節は「節分」「彼岸」「八十八夜」「土用」などがあります。
梅雨に関しては、すでにお話ししましたが、梅の実が熟す頃に降る雨だから「梅雨」と表現されました。しかし元は黴(かび)をもたらす雨の「黴雨」と言う説もあります。
ただ黴雨はイメージが良くないので梅雨になったわけですが、この時期、黴は避けては通れません。いずれにしても梅雨の主役は「梅」と「黴」だと言えるのではないでしょうか?
また梅雨の事を「栗花落」とも言います。
都会暮らしの人はピンと来ないかもしれませんが、山里で生活している人は「なるほど」と思われるかもしれませんね。
梅雨の時期の花として「露草」や「紫陽花」は有名ですが、ちょうどこの時期には「栗の花」が咲きます。あまり良い香りではありませんが・・・。
この栗の花が梅雨の長雨で散ってしまう、つまり花が落ちてしまうので「栗花落」となるわけです。
また、栗の花が咲き始めると梅雨入りを察したと言う説もあります。
よみかたは「つゆ」「つゆおち」「つゆり」「ついり」などいろいろあるようで、苗字にもありますがお菓子の名前にもなっています
先人は色々な方法で梅雨入りを感じ取っていたようですが、梅の実や栗の花が梅雨入りの大きな目安になったのでしょう。
目安になる花はまだあります。
先日テレビの天気予報で聞きましたが「梅雨葵」もその一つです。
正式には「立葵」と言いますが、この花は茎の下部から次第に上部へと花が咲きます。茎の下の花が咲き始めると「梅雨入り」になり、茎の天辺の花が咲けば「梅雨明け」です。
あの手、この手で梅雨入りを判断した先人の観察力には敬意を払いたいものです。そして、このようにして生まれた「勿体ない文化」に敬意を表したいと思います。