マナーうんちく話535≪五風十雨≫
11月23日は「勤労感謝」の日です。
「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合う」ための祝日です。
但し、今では殆ど知られていませんが、本来は秋の収穫に感謝し、祝う「新嘗祭(にいなめさい)」という祭日でした。
つまり、勤労に感謝するという意味より、その年に収穫された新米や新酒を、感謝の気持ちを添えて、神様にお供えする行事だったわけです。
このように祝日の本来の意味や名前が異なる例は他にもあります。
例えば「建国記念の日」は「旧紀元節」で、「文化の日」は「天皇誕生日」でした。
中でも「新嘗祭」は、「飽食の国」になった今ではピンと来ないかもしれませんが、長い間日本人にとっては特別な意味を持っていました。
「食べることは生きること」ですから、昔の人にとって、秋の収穫が無事に済んで、向こう一年間の食糧が確保されるということは、最高の喜びであり、安心感に浸れる根源を成すものです。
これは個人ばかりではありません。
国家にとっても存亡にかかわる最重要事項です。
だから、古くから米や麦などの五穀の収穫を祝う風習が根付いたわけです。
改めて「新嘗祭」は、米を主食にしている日本国民にとって、とても大切なお祭りだということを認識したいものです。
ちなみに、新嘗祭がすむまで新米を食べない風習もあるようですが、今は米の品種により収穫時期がかなり異なります。
いずれにせよ、新米を口にする時には、マナーの根源を成す「感謝の心」を忘れないようにしたいものですね。
ところで「生きることは食べること」である以上、何を主食にしているかは別として、収穫に感謝するお祭りは各地に存在します。
ボジョレヌーボーは、その年に収穫されたブドウで作られた新酒を楽しむイベントで、特に解禁日が設けられています。
日本でもすっかりおなじみになりましたが、解禁日は11月の第3木曜日です。
フランスで作られたワインの新酒が、空輸でいち早く日本に届くわけですから、何とも贅沢な話しですね。
さらに、ワインの新酒は日本各地でも生産されます。
この季節ならではの楽しみです。
また、国によってはビール祭りもありますが、これも嬉しいお祭りです。
この季節に美味しい物が勢ぞろいすることはとても嬉しいことですが、一つ気になることがあります。
例えば、「新嘗祭」は飛鳥時代から脈々と続いている伝統行事で、米を主食にしている日本人が最も大切にしたいお祭りだと思います。
それが外国から入って来た新しい文化に押されて、失せてしまうのは寂しい気がしますが如何でしょうか?
本当にこのような国がハッピーになれるのか?と不安もよぎります。
冬至にカボチャを食べる風習より、ハロウィーンデーにカボチャが登場する方がはるかに知られていることもしかりで、国際化の本来の意味が履き違えているとしか思えません。