マナーうんちく話1030《知っておきたい季節の言葉「送南風」と「麦湯」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

朝夕の心地良い風や虫の音に、秋の気配が漂う頃になりました。

地方により意味が多少異なりますが、精霊を見送った後に吹く風を「送南風(おくれまじ)」と言います。

夏の終わり頃に吹く南南西の風を意味する場合もあります。

いずれにせよ、精霊を送ると言う大役を果たし、夏を惜しむ、少し寂しい気持がする風のことです。

前回お話しした「行合の空」の下で、夏を見送って、風流な秋を迎えるわけですね。

しかし「送南風」は、台風期の強い風を意味する場合もあります。
台風15号の影響で、これから強風に見舞われる恐れが出てきましたが、くれぐれもご自愛ください。

ところで、前回は「甘酒」でしたが、今回は、この時期甘酒と共に多くの人に好まれた飲み物「麦湯」にふれておきます。

今では、どこの家庭でも職場でも、甘酒よりかなりポピュラーな飲み物になっていますね。

当時は今の様に水道が完備していなかったせいで、感染症の病気が蔓延したので、江戸っ子は、飲み水に関しては、大変注意を払いました。

そんな頃に暑気払いとして、甘酒と共に好まれたドリンクが「麦湯」です。

クーラーや扇風機の無い当時は、夜になると、家の中より外が過ごしやすいので「夜遊び」が好まれるわけですが、その時の飲み物が麦湯で、夜店で販売されていました。

それがなぜ流行したかと言えば、美味しくて、栄養価が高く、お手頃価格もありますが、その魅力的な販売方法も見逃せません。

色気を漂わせた、着物姿の愛想の良い若い女性が、上手に接客したのが受けたようです。
世界が注目する日本の「接客技術」も、この頃から磨かれてきたのかもしれませんね。

さらに、これに甘味料を加え、甘くした麦湯が登場したので、大人のみならず、子どもにも受けるようになるわけです。

企業努力のたまものであり、江戸っ子の知恵でもあり、見習うべき点が多々ありますね。

麦湯は平安貴族が愛飲し、鎌倉・室町の武士たちが戦地に持参した合理的な飲み物でしたが、江戸時代になるとすっかり庶民に普及し現在に至る、大変歴史の在る飲み物です。

そして今では、麦茶の健康効果が科学的に解明され、夏バテ防止の健康飲料から通年の飲み物になりました。

しかも、カフェインが含まれておりません。

なぜ、カフェインが含まれてないのでしょうか?

茶葉を使用しないからです。
ちなみに、初夏に収穫する摘みたての大麦の種子を焙煎し、それを煎じた飲み物が麦茶です。

従って、「お茶」と表現するのは厳密に言えばおかしいと思いますが、明治になると「麦湯」は「麦茶」と呼ばれるようになりました。

日本は今や世界一の飽食の国になり、食べ物や飲み物は有り余るほど恵まれています。

感謝の心で頂くと共に、今何を飲んでいるのか、何を食べているのか、その知識や歴史をキチンと理解することはとても大切なことです。
麦茶を飲む機会が有れば、ぜひ話の種にして下さい。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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