マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
朝夕の心地良い風や虫の音に、秋の気配が漂う頃になりました。
地方により意味が多少異なりますが、精霊を見送った後に吹く風を「送南風(おくれまじ)」と言います。
夏の終わり頃に吹く南南西の風を意味する場合もあります。
いずれにせよ、精霊を送ると言う大役を果たし、夏を惜しむ、少し寂しい気持がする風のことです。
前回お話しした「行合の空」の下で、夏を見送って、風流な秋を迎えるわけですね。
しかし「送南風」は、台風期の強い風を意味する場合もあります。
台風15号の影響で、これから強風に見舞われる恐れが出てきましたが、くれぐれもご自愛ください。
ところで、前回は「甘酒」でしたが、今回は、この時期甘酒と共に多くの人に好まれた飲み物「麦湯」にふれておきます。
今では、どこの家庭でも職場でも、甘酒よりかなりポピュラーな飲み物になっていますね。
当時は今の様に水道が完備していなかったせいで、感染症の病気が蔓延したので、江戸っ子は、飲み水に関しては、大変注意を払いました。
そんな頃に暑気払いとして、甘酒と共に好まれたドリンクが「麦湯」です。
クーラーや扇風機の無い当時は、夜になると、家の中より外が過ごしやすいので「夜遊び」が好まれるわけですが、その時の飲み物が麦湯で、夜店で販売されていました。
それがなぜ流行したかと言えば、美味しくて、栄養価が高く、お手頃価格もありますが、その魅力的な販売方法も見逃せません。
色気を漂わせた、着物姿の愛想の良い若い女性が、上手に接客したのが受けたようです。
世界が注目する日本の「接客技術」も、この頃から磨かれてきたのかもしれませんね。
さらに、これに甘味料を加え、甘くした麦湯が登場したので、大人のみならず、子どもにも受けるようになるわけです。
企業努力のたまものであり、江戸っ子の知恵でもあり、見習うべき点が多々ありますね。
麦湯は平安貴族が愛飲し、鎌倉・室町の武士たちが戦地に持参した合理的な飲み物でしたが、江戸時代になるとすっかり庶民に普及し現在に至る、大変歴史の在る飲み物です。
そして今では、麦茶の健康効果が科学的に解明され、夏バテ防止の健康飲料から通年の飲み物になりました。
しかも、カフェインが含まれておりません。
なぜ、カフェインが含まれてないのでしょうか?
茶葉を使用しないからです。
ちなみに、初夏に収穫する摘みたての大麦の種子を焙煎し、それを煎じた飲み物が麦茶です。
従って、「お茶」と表現するのは厳密に言えばおかしいと思いますが、明治になると「麦湯」は「麦茶」と呼ばれるようになりました。
日本は今や世界一の飽食の国になり、食べ物や飲み物は有り余るほど恵まれています。
感謝の心で頂くと共に、今何を飲んでいるのか、何を食べているのか、その知識や歴史をキチンと理解することはとても大切なことです。
麦茶を飲む機会が有れば、ぜひ話の種にして下さい。