マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
七草には「春の七草」と「秋の七草」がありますが、春の七草は「七草粥」になり、食用として重宝され、早春の風物詩として有名ですが、いずれも地味な花で華やかさは感じられませんね。
ちなみに「春の七草」とは、なずな(ぺんぺん草)、ほとけのざ、はこべ、せり、ごぎょう、すずな(かぶら)、すずしろ(大根の葉)です。
これに対して秋の七草は観賞用で見て楽しむ花として、日本人には古くから愛されてきました。
古代大和民族がいかに秋を愛し、物さびた可憐な秋草に対して、いかに豊かな詩情をいだいてきたか、如何に親しみを込めたが伺える句があります。
《秋の野に 咲きたる花を および折り かき数ふれば 七種の花》
《萩が花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花》
いずれも万葉集に収録されている山上億良の歌で、これが「秋の七草」の起源だと言われています。
秋の野に咲いている花を 指折り数えたら七種類の花があります。
ハギ、オバナ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、アサガオ。
長かった猛暑がおさまり、やっと過ごし安すくなって、秋風が吹いている中で、花を愛でる山上億良の優しい心根が、ヒシヒシと感じられる歌です。
特にこの中で登場する花は、昔から日本人には相性が良かったのでしょうね。
但し、古代人は現在の桔梗を「朝顔」といい、芒(すすき)を動物の尾のようだとして「尾花」と表現しています。
秋の七草は時代により若干異なる点にご注意ください。
それでは、秋の七草を順に紹介して参ります。
話の種にして頂ければ幸いです。
【萩】
草冠に秋と書かれるように、日本の秋を代表するマメ科の花です。
加えて、これは是非頭に入れて頂きたいのですが、万葉集の中で一番多く詠まれている花です。
紅紫色の可憐な花が秋風になびく風情は、日本人の心に沁みるものがあります。
平安貴族は、春には梅の花を、秋には紅色の萩の花を彼女に頭にかざしたのでしょうか・・・。
いずれも西洋の貴族にも負けない素敵なロマンを感じさせてくれますね。
次回に続きます。