マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
高齢化と少子化が同時に進行すると、中山間地域では、子どもの笑い声が聞こえなくなります。
幼稚園や小学校もどんどん減っています。
田畑や山の管理が行き届かなくなってきます。
以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を栽培せず、かつこれからも栽培する予定が無い土地の事を統計上の用語では「耕作放棄地」と呼びます。
法律用語に「遊休農地」という言葉がありますが良く似たニアンスですね。
いずれにせよ、このような状態になれば、数年もたたないうちに農地の原型が失われる位荒れてきます。
こうなると猪、鹿、猿などの思うつぼになるわけです。
耕作地が減少し、耕作放棄地が増える原因は、農業が儲からないからとか、魅力が無いからという理由もありますが、高齢化による労働力不足が大きな原因です。
国民の食を支える農地が減ると言うことは、未来に希望が持てるものではありません。
ちなみに、昭和40年頃の日本の食糧自給率は73%位ですが、現在は39%位で、先進国では最下位クラスです。
次に、高齢化が進行すると農業に陰りが見えて来ると共に、地域の冠婚葬祭の行事もスムーズに行われなくなります。
これも非常に由々しき状態です。
冠婚葬祭の儀式は長い年月の中で、地域で育まれ定着した、まさに地域を象徴する伝統文化です。
人が人としてあることの意義や意味を、先祖から受け継いできた大切な文化ですから、生きて行く上で最も大切にしてほしいものです。
勿論、不易流行的側面も有しているので、時代の流れに合わすことも大切です。
また不必要に形式にこだわることもないでしょう。
しかし、地域における人間関係が希薄になったせいで、個人的な行事になってしまうことは誠にさびしい思いがあります。
長い年月の中で定着してきた地域独自の伝統行事を礼節を通じて、次世代に継承することが出来なくなると、地域コミュニティーが機能しなくなります。
高齢化率が50%を超え、田畑や山の管理が滞り、冠婚葬祭の行事がスムーズにいかなくなった状態を「限界集落」と表現しますが、これから増加の一途をたどることは簡単に予測できます。