マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
《春されば まづ咲く宿の 梅の花 ひとり見つつや 春日暮(はるひく)らさむ》 万葉集
春に先駆けて咲いた梅の花を一人眺めながら 春の一日を過ごすのだろうか・・・。
相変わらず厳しい寒さが続いていますが、すでに梅が花を咲かせています。
梅は厳寒の中、百花に先駆けて真っ先に花を咲かせるので「春告げ草」と呼ばれており、縁起のいいものの代表格とされています。
以前にもお伝えしましたように、東風が梅の花を咲かせてくれるわけですが、一輪また一輪と咲く度に、春が近づいて来る気がしますね。
上記の句は山上億良の作ですが、梅はもともと桜のように、日本には存在していませんでした。
遣唐使が中国から持ち帰り、やがて貴族の間で、梅の木を庭に植えて愛でるのが、当時のステータスだったとか・・・。
だから、この時期になると貴族の屋敷では「梅見の宴」が開かれていたようです。何とも風流ですね。
そして、鶯(うぐいす)が山里で、もうすぐ泣き始める頃です。
梅が「春告げ草」なら、鶯は「春告げ鳥」。
まさに夢の競演です。
その時期、虫や鳥が始めて鳴き始めることを「初音(はつね)」と言いますが、当時は、鶯の初音が大きな楽しみであったようです。
ところで、「梅」と「鶯」とくれば「梅に鶯」と言う言葉が浮かんできますね。
では、この意味をご存知でしょうか?
「梅の木に鶯が止まる」と思っている人も多いと思います。
また、梅には鶯ではなく、この時期によくみられる「メジロ」だと言う人も多いようです。
「梅に鶯」とは、梅の木にウグイスやメジロが好んで止まると言う意味ではありません。
「二つの物が程良く調和する」と言う意味です。
梅も鶯も、共に厳しかった冬から、待ち望んだ春を告げてくれるわけですから、昔の人にとって両者は、幸せを運んでくれる、夢のコラボレーションだったわけです。
梅と鶯を二つ並べておけば、縁起がさらによくなると言うよりは、「梅が咲き、鶯の声が聞こえるようになったから春が来たよ、良かったなー」という気持ちがこもっているわけです。
現在は、なにもかも豊かで便利になりましたが、それを持続するのは大変です。
そのせいでしょうか?
やたらと「競争」とか「戦略」等と言う言葉が飛び交っています。
「競争」や「戦略」等と言う言葉は、豊かさの維持や進歩の原動力として大切なかもしれませんが、これらの言葉からは心の豊かさを得ることは不可能です。
人や自然との「和」や「調和」も大切にしたいものです。
「梅に鶯」、日本ならではの、とても美しい言葉です。