マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
朝夕がめっきり冷え込み、冬の到来を感じる頃になりました。
11月22日は二十四節季の一つ「小雪(しょうせつ)」でした。
今までの雨が雪に変わる時期と言う意味ですが、暦とは裏腹に小春日和に恵まれた穏やかな日が続いていますね。
ちなみに、晩秋から初冬にかけて初めて霜が降りることを「初霜」と言いますが、平均すれば12月の前後です。
露が冷たく感じる「寒露」から、朝夕めっきり冷え込み霜が降り始める「霜降」、さらに冬の気配が漂い始める「立冬」、続いて「小雪」と、これからは次第に冷え込みが増すと共に夜が長くなり、ふと感傷的な気分に陥ることもあるかもしれませんね。
今では文明の利器のお陰で、暑い時も寒い時も、また長い夜も快適に過ごせますが、昔はさぞかし大変だったと思います。
特に照明器具が乏しかった時の長い夜は、本当につらかったのではないでしょうか。
ところで、刑罰が厳しい意味で使用される「秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)」という言葉をご存知でしょうか?
秋の霜と夏の厳しい暑さのことですが、いずれも草木が枯れる位厳しいものです。勿論野菜も大打撃を受けます。
温室栽培がない時代ですから、霜が降り始めると急に収穫が出来なくなり、たちまち食べ物に不自由します。しかし「生きることは食べること」です。
食べ物を求めて奔走しなければなりません。
秋は栄養価の非常に高い栗や柿やクルミなどが手に入ります。
しかし、それらは限りがあります。
これに変わる食べ物が実はドングリです。ドングリは生産量も多く、でんぷん質を豊富に含んでいるので、当分の間命を繋ぐことが出来ます。
でも、そのままでは渋ガキと同じで、渋くて食べられません。
渋抜きをするわけですが、すでに縄文時代の人はドングリを煮たり、水に浸して渋抜きをすることを知っていたとか・・・。
厳しい環境で生きて行くための生活の知恵ですね。
食料自給率が39%と、先進国では最下位ながら、世界屈指の「飽食の国」「美食の国」日本では考えられないことですが、昔の人にとって、食べ物を確保することは本当に大変だったと思います。
「頂きます」と「御馳走様」と言う食前・食後の美しい挨拶を、このコラムでも何度も取り上げました。
「頂く」は、人が生きて行くために食材の命を頂くと言う意味で、食材の命に感謝する言葉です。
一方、「馳走」とは、馬を走しらせたり、自分が走り回ると言う意味で、奔走することです。
では何故走るのか?と言えば、走り回って食べ物を確保するわけです。
つまり昔は食材を、自分のためや大切な人のために、走り回って確保していたわけです。
食べ物が自分の口に届くまで、多くの人が走り回ってくれたので、感謝の意味を込めて、「馳走」に「御」や「様」を付け、「御馳走様」になったわけです。
今では、「自分を育ててくれるために一生懸命働いて食べさせてくれるお礼の言葉」や、「朝早く起きて料理を作ってくれたお礼の言葉」として使用します。
11月24日は「いいにほんしょく(いい日本食)の日」です。
食事を頂く時に再度、和食に込められた豊かな精神文化を思い浮かべてみるのもお勧めです。
そして、ご飯がおいしく食べられることと、自然の恵みにも感謝・感謝ですね。