マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
秋色が益々濃くなり、街ゆく人々のファッションが微妙に変わってきた気がします。
そして秋から冬に移行するこの時期は、空の色も、吹き抜ける風も、川や山の風情も装いを変え、景色までが明るく装っているようです。
衣食住に恵まれ、便利で、平和な国と時代に生まれ育った事に感謝・感謝です。
しかし喜んでばかりも行きません。
年を重ねると、寒さに向かうこの時期は、何かと身体が変調をきたしやすい時でもあります。身も心も健康でありたいですね。
11月は霜が降りて来るので「霜月」と言われます。
加えて、日本全国津々浦々において神楽が盛んに行われるので「神楽月(かぐらづき)」とも言われます。
もともと、日本神話で、五穀豊穣を始め、長寿、病気や災難を追い払うために、氏神様に奉納された歌や踊りが神楽の起源ですが、「かぐら」と言う言葉を聞いて心が和らぐのは、神楽には、日本人の心の原点が宿っているからではないでしょうか?
今まで、花見や正月に神様と人が共に食事をする「神人共食文化」、加えて「神人共食箸」に度々触れましたが、昔から日本人は神様と和することや共に楽しむ文化を形成してきました。
そして神楽には、神様が宿る自然に対する畏怖や畏敬の念が込められており、今なお、人々の暮らしと共生しています。
もともと稲作を中心にした農耕文化で栄えた日本人は、稲作から多くの精神性を学びました。
米を作るには「田んぼ」が必要ですが、田んぼには水の管理が欠かせません。従って一人だけでは無理で、みんなが仲良く歩調を合わせながら働かなくてはなりません。
また、米は他の作物と異なり連作が可能です。
従って稲作は狩猟と異なり、移動することなく、その地に定住することができます。
だから、「しきたり」や「マナー」が生まれる土壌があり、聖徳太子の「和の心」の原点が根付いていたわけです。
さらに、日本には1000を超える神楽があると言われておりますが、日本の神話では、争いによるのではなく、平和な話し合いによる国譲りが行われたと言われております。
平和と神楽。
切っても切れない繋がりですが、改めて日本の素晴らしさを認識したいものです。
それに、神楽の衣装も目を奪うものがあります。
神楽は舞いや役割により使用する道具が異なりますが、身につける衣装も様々で大変豪華です。
笛や太鼓は白い着物に袴スタイルですが、舞う人の衣装は絢爛豪華という言葉がぴったりです。
金糸・銀糸を織り込み、中には銅版やガラス玉などが縫い込められており、しかもそれらが全て手作りとくれば、製作に要する期間も1月位から1年位、値段にして100万円を超えるものもあるとか。
現在、日本で継承されている芸能は数えきれない位ありますが中でも一番古いのが神楽です。拍手喝さい、笑いが起こる神楽を、ご馳走や酒と共に、老若男女が一体となり、ワイワイ楽しむ文化はまさに「神人和楽」の文化です。
10月31日はハロウィンで盛大な仮装行列が繰り広げられました。
西洋の文化におおらかになることには反対ではありませんが、何もかも西洋かぶれするのではなく、先ずは自国の文化や歴史や礼儀作法を正しく理解して、次世代に伝えて行くことが大切だと痛感します。