マナーうんちく話819《アリとキリギリス(イソップ寓話)》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:マナーの心得

日が暮れるのが速くなったせいか、夜になると虫の音が一段と高くなってきます。

日本では昔から四季の風情を愛でる習慣がありますが、同時に虫の音の風情を楽しむ風習も存在します。

また、虫の音を愛でる「むしきき」と言われるユニークな風習があります。
虫を愛でる文化ですが、虫そのものの姿ではなく、蛍のような虫が発する光や、松虫や鈴虫やキリギリスのような鳴き声を愛でる文化です。

今頃鳴く虫はキリギリスやコオロギで呼び名も色々あるようですが、七十二候では、10月18日から22日までは「キリギリスが戸口で鳴く頃」とされており、キリギリスが人の近くにやって来て美しい音色を響かせてくれます

その鳴き声が、深まる秋の哀愁を漂わせてくれ、毎年霜が降りて来る頃まで楽しませてくれます。

ところで西洋には、「北風と太陽」「金のオノ・銀のオノ」等でおなじみのイソップ物語の中に、「アリとキリギリス」があるのをご存知でしょうか?

アリとキリギリスが登場しますが、それらを色々な角度から捉えることができます。

アリは冬に備えて食料を確保するために精一杯働きます。

一方、キリギリスはバイオリンを弾きつつ音楽を楽しんでいます。

そして冬がやってきました。

アリはこの時に備えて、夏の間しっかり働いて食料をためていたので、冬になっても不自由なく暮らせることができます。

しかし、キリギリスは音楽を楽しんでいたので食べ物に不自由します。
だから、なんとか打開策を見つけなくては困ります。

そこで、キリギリスはアリの所に行って、食べ物を恵んでくれるようにお願いします。

①アリはキリギリスに対して「貴方は働きもせず音楽に夢中になっていたので自業自得です」と言って食べ物を与えませんでした。
この時点で、キリギリスは飢え死にすることになります。

②アリはキリギリスが食べ物に不自由し窮地に陥っているので、気持ち良く食べ物を分けてあげました。キリギリスはたいそう喜びました。

現実的にはキリギリスは11月頃までの寿命ですから、冬の準備を怠ったから死んだのではありませんが、この物語には色々な教えが含まれています。

①は将来に備えて準備を怠ると大変な事になりますよ!
日頃から一生懸命に働こうよ!という教えです。

②は困っている人がいれば出来る限り力になってあげることが大切ですよ!と言う教えに繋がります。

加えて、キリギリスは何も好き好んで音楽を楽しんでいるわけでもありません。
限られた時間内でこの世で一番大切な仕事をしなければいけません。

つまり交尾して子孫を残すことです。
出来る限りの力を振り絞って、鳴き声をたてメスを呼び寄せ交尾をするわけです。つまりバイオリンを弾くのは与えられた大切な義務です

このように考えれば色々な解釈が成り立ちます。
早い話し、生き方や考え方に正解は無いと言うことでしょうか?
人と比較するのではなく、自分に与えられた環境で、自分らしく一生懸命生きることが大切だと考えます。

マナーも同じです。
このような時には、このようにしなければならないというものではありません。
相手の事情により、臨機応変に対応する必要があります。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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