マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
お盆休みも過ぎて今日から仕事に精を出されている人も多いと思います。
ところでお盆はどのように過ごされましたか?
お盆の過ごし方はすっかり多様化してきましたが、本来は「飢餓道に落ちて飲み物や食べ物に不自由し飢えに苦しんでいるのを、お釈迦様の教えに基づいて供養して、それを救った」という故事からきているので、「里帰りされた仏様をご馳走でお持て成しする行事」です。
日常生活における「しきたり」は、決められた日に、誰もが、ごく当たり前のように行う、いわば社会の掟のようなものだったわけです。
今のように科学も医学も発達していない時代ですから、豊作や健康は、神や仏に依存する割合が今では信じられない位高かったのでしょうね。
さらに神や仏を敬う精神も半端ではなかったと思います。
全国には、神社が約81000社、お寺が約76000寺院有りますが、この数字からも容易に伺えます。
勿論、コンビニや郵便局よりはるかに多い数字です。
ところで、日本で初めて成文化された礼儀作法は聖徳太子の17条の憲法だといわれておりますが、その冒頭で聖徳太子は「和をもって貴しとなす」と述べられています。
この時代から日本人は「和する」と言うこと、すなわち人と人との「和」、さらに「平和」や自然との「調和」も大切にしながら、家族や地域のコミュニティーを大事に維持してきたのではないでしょうか?
核家族化が進展すると共に、科学や医学が発達し、物質的にも豊かになり、神や仏に頼ることが少なくなったせいでしょうか?「しきたり」の存在意義が低下してきた感があります。
お盆や正月しかりです。
それにつけて無縁社会、孤独死等の由々しき言葉が生まれ、家族や地域の絆は希薄化する一方です。
私たちは幼い頃には「人に迷惑をかけるな!」と教わりました。
家族・地域・職場という共同体の中で、自分のことばかりではなく、常に他者の存在を念頭に置き、思いやりを持って助けあうことの大切さを学びました。
だから、個人の都合より秩序や集団や調和を大切にしてきたから、お盆やお正月の時期になれば全ての人が、ご先祖様を迎える準備をして、お持て成ししてきたわけです。
家族や地域が一体となって調和を図り、ご先祖様と共に食事をし、時間を共有することによって絆を深めてきたから、日本は世界でも指折りの技術国や治安の行き届いている国になったのだと思います。
和食は世界無形文化遺産に登録されていますが、ユネスコは和食と年中行事の密接な関係を大変評価しています。
つまり、盆・正月・節句などの行事には食事がつきものですが、この自然の恵みである食を家族や地域で別け合い、共にすることで家族や地域の絆を深めてきたわけです。
特に盆や正月の料理には、先祖を敬い、ご馳走や酒でもてなす日本人の豊かな精神が凝縮されています。
加えて、秋にはお月見やお祭りの行事がありますが、これらにも大変豊かな精神文化や食文化が存在しています。
本来の意味や意義を正しく理解すると共に、出来る限り家族や地域で共有し、絆を深めて行きたいものです。