マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
立夏を過ぎ、春を華やかに彩る花が一段落すると、「卯の花」が夏の到来を知らせてくれます。
また、陰暦4月の異称は「卯月」ですが、これは卯の花が咲くからという説が有力です。
また、「うの花の 匂う垣根に 不如帰早もき鳴きて 忍音もらす 夏は来ぬ」と歌われていますが、梅に鶯、萩に鹿、紅葉に猪のように、卯の花には不如帰(ほととぎす)が万葉の頃からお似合いとされています。
「卯の花」といえば、大豆から作られる「オカラ」を思い起こす人も多いと思いますが、卯の花が散った状態はオカラとよく似ていますね。
また、可憐な白い花は雪にも良く似ているので「雪見草」とか「夏雪草」という素敵な名前が付けられています。
今、夏と言えば「クールビズ」とか「超クールビズ」の言葉に振り回され、夏の訪れを知らせてくれる純白の花に目を向ける人も少なくなりましたが、先人の風流な自然観は、また別の角度から地球の温暖化を抑制する効果があると感じます。
豊かな感性を、美しい言葉で表現した先人には見習うべき点が多々ありますね。
5月18日は「言葉の日」です。
「こ(5)、とば(18)」の語呂合わせで、正しい言葉遣いをしましょうと定められた日です。
昔から教育の根源を成すものとして、「読み・書き・ソロバン」と言われてきましたが、「読む」とは相手が伝えたい事を正確に理解する事で、「書く」とは自分が伝えたい事を正しく表現することですが、その土台は言葉です。
そして、世界屈指の長い歴史を有し、四季があり、自然と共生してきた日本には、独特の美しい言葉が多々あります。
特に、このコラムでも何度も触れましたが、季節や天候等の状態を細かく表現するものには、美しい言葉が多いですね。
先人が、四季と真摯に向かい合い、長い時間をかけ、色々な思いを込めて作った数多くの美しい言葉には、心が和む雅やかな響きが感じられ、日本語の持つ美しさを改めて感じます。
日本人を改めて実感するとともに、自然に寄り添い、自然を美しい言葉でお洒落に描写する先人にも、教えられるものは多々あります。
挨拶、手紙、メール等でも積極的に使用したいものです。
国際化の進展と東京オリンピック開催決定に伴い、英語教育が益々盛んになって来ています。
幼い子に英語を教えるのも良いかもしれませんが、先ずは、目先に存在する日本語を正しく理解することも大事ではないでしょうか。
そして、日本の歴史、文化、礼儀作法を始め、地域のしきたりや慣習をしっかり学んで、その素晴らしさを世界に向けて発信したいものです。
5月1日から「クールビズ」が始まっています。
地球規模での温暖化を防止するために、冷房の温度を高めに設定し、二酸化炭素の排出量を少なくしようとする試みには異論はありません。
しかし、四季が明確に分かれている日本には平安の時代から「衣替え」という美しい言葉が存在し、環境の変化に上手に対応してきた歴史があります。
取って付けたような「クールビズ」という言葉が先行し、衣服に対するお洒落が強調されがちですが、「衣替え」という、日本の四季を象徴するお洒落な言葉が失せて行くのは寂しいですね。
くわえて、最近はやたらと横文字が多くなり、それと共に日本の美しい言葉が言葉としての機能をはたさなくなり、忘れ去られている気がします。
日本人として何が大事か、もう一度考えたいものですね。