マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
暑くもなく、寒くもなく、一年で最も快適な5月がスタートし、たんぼでは耕運機の音が聞こえるようになりました。
ところで、5月は「皐月(さつき)」と言いますが、稲作を中心として栄えた日本では、元々「サ」は稲作を意味し、漢字の「皐」は、神様にささげる稲の意味があります。
従って「皐月」とは、耕作に由来し、農業と非常に関わりが深い言葉で、「田植え」をする月、すなわち「早苗月」が略され、「皐月」になったと言う説が有力です。
また、気候も良く、ゴールデンウイークも重なり、各地で多彩なイベントが繰り広げられていますが、「新茶」の美味しい時期でもあります。
平成26年の「八十八夜」は5月2日ですが、立春から数えて88日目と言う意味です。
そして、この時期に摘まれた新茶の葉は極上品で、神様・仏様にお供えしたり、お世話になった人への贈答にする習慣がありました。
加えて、八十八は末広がりで、大変縁起のいい数字とされているので、八十八夜に摘まれたお茶を飲むと、寿命が延びると言われています。
ほのかな甘みと優しい香りは、身も心も美しくしてくれそうですね。
栄養成分に富んだ新芽は二番茶、三番茶に比べ、渋み成分が少なく、旨み成分が多いといわれています。
さらに、この時期になると霜の心配も薄れ、農作業にとっては好都合になり、しかも縁起のいい日ですから、「種籾」を蒔くのも良い頃です。
花は「藤の花」が、紫や白の品の良い花を咲かせます。
藤は非常に歴史がある花で、はるか万葉の頃から多くの人々を魅了してきましたが、つるも用途が広く、家具や籠やバックなどが作られます。
日本では藤棚や盆栽に仕立てられることが多いですが、各市町村の花にもなっていますね。ちなみに、私の住む倉敷市の花も藤の花です。
ゴールデンウイーク後半の5月5日は、男の子のお祭り「端午の節句」です。「菖蒲の節句」とも言われます。
同時に、男の子に限らず、全ての子供が元気ですくすくっと育ち、幸せになる事を願う「こどもの日」でもあります。
「鯉のぼり」が大空に威勢良く羽ばたき、家の中には鎧や兜が飾られ、「菖蒲湯」に浸かり、「柏餅」を食べる日です。
鯉のぼりには、鯉が産卵のため急な川を上り「竜」になるという言い伝えがあります。竜は想像上の動物ですが、竜王と呼ばれるように皇帝のシンボルですから、鯉のぼりは男の子の立身出世を意味します。
菖蒲の根や葉を、お風呂に浮かべて菖蒲湯に浸かる理由は、菖蒲には独特の臭いがあり、この臭いが邪気を払うと信じられていたからです。それに、菖蒲には薬効も有ります。
菖蒲湯に浸かり、邪気を払い、薬草効果も味わうことで、身も心もリフレッシュして、暑い夏に供えるのもお勧めです。「菖蒲」=「尚武」、「勝負」に通じることから、縁起を担つぐのもいいかもしれませんね。
「柏餅」をたべるのは、柏は新しい葉がでないと古い葉が落ちないから、「家が絶えない」、「跡取りが絶えない」意味に通じ縁起が担がれたからです。
いずれも、鎌倉時代から江戸時代、つまり「家」と言うものに絶対的価値観が置かれていた頃に広まった「しきたり」ですから、今の時代には合わない点も有るかもしれません。
しかし、子どもの健康や幸福を願う気持ちは古今東西普遍です。
ユネスコの世界無形文化遺産に和食が登録されましたが、その理由の一つにこのような年中行事との密接な関わりがあります。
正しく理解し、豊かな生活を送ると共にキチンと次世代に伝えたいものです