マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
いよいよ3月、春になりましたね。
3月は「弥生」と言われますが、これは春になって萌えいずる草が、益々生い茂るから、「いやおい月」と言われたのが、略されて「やよい」となったと言う説が有力です。
ちなみに「弥」は益々という意味で、「生」は生い茂るという意味です。
さらに3月は「桃月」「花見月」「花咲月」「夢見月」等と表現されます。
いずれも、お雛様を始め、春の華やぎが感じられる心浮き浮きする名前ですね。
そして、この時期の旬の野菜と言えば「菜の花」が浮かびますね。
我が家の畑でも、只今菜の花が元気よく存在感を増しています。
お浸し、ゴマ合え等の和食の定番から洋食のスパゲティーなど等、見た目も鮮やかで、栄養満点で、さらに美味とくればもう最高です。
だから春の恵みとして、昔から多くの日本人に親しまれたわけで、それを物語るように、数多くの童謡や俳句が存在します。
『菜の花畑に、入日薄れ、見渡す山の端、霞み深し、
春風そよ吹く、空を見れば、夕月かかりて、匂ひあわし』
「早春賦」「春が来た」「春の小川」等と共に、日本人なら誰もが口ずさんだ経験があるお馴染みの唱歌で、歌のタイトルは「朧月夜」です。
ちなみに「朧月夜(おぼろづきよ)」と言えば、モヤや霧などに包まれた、霞んで見える夜の月です。
そして菜の花と言えば、与謝野蕪村の『菜の花や 月は東に 日は西に』を思い浮かべる方も多いと思います。
名の花が咲き乱れた畑で、立ち止って空を見上げていると、月が東から昇ってくると同時に、太陽が西に沈んでいく情景でしょうか。
今から200年以上も前に詠まれた俳句が、今なお多くの日本人に語り継がれているわけですから、本当にすごい事だと思います。
論語に「知者は水を楽しみ 仁者は山を楽しむ。
知者は動き 仁者はしずかなり。
知者は変化を楽しみ 仁者は人生を楽しむ」と言う言葉があります。
知者とは、頭のいい人、つまり知恵の優れた人と言う意味です。
仁者とは、情け深い心の人、つまり人格者と言う意味です。
知者は、行動力が旺盛な大変有能な人物で、リーダーシップが取れる人です。
これに対して、仁者は落ち着きの有る心の優しい人で、受動的ではあるけど臨機応変に対応する凛とした人でしょうか。
太陽と月のような関係ですね。
皆さんはどのタイプでしょうか?
私は、恥ずかしながらとても知者や仁者の域には入れませんが、どちらかと言えばお月さまのようなタイプだと思っています。
最も、単に大人しいだけですが・・・。
ところで、草木が芽を出し始めることを「草萌え」と表現します。
そして、芽を出し始めた草木には雨が無くてはなりません。
だから、この時期に降る雨の事を「木の芽起こし」と言います。
昔の人は、草木の若い芽と天気の具合を本当に上手に結び付けていますね。
素晴らしい感性に脱帽です。
都会暮らしの人は解らないかもしれませんが、田舎で暮らしていると、この時期には、土の中から小さな芽が「今日は!」をしている姿をよく見かけます。
間もなく百花繚乱の本格的な春を迎えますが、どんな美しい花でも突然咲くと言うことはまずあり得ません。「今日は!」した芽が、美しい花を咲かせるには山あり谷ありの紆余曲折があります。
春になり、希望や夢を抱き人生を前向きに歩み始めた人も多いと思いますが、彼らが美しい花を咲かせるように、「智者」や「仁者」になり恵みの雨を降らしてあげたいですね。