マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
今からちょうど100年前頃に発表された歌で早春賦「春は名のみよ風の寒さよ・・・」を口ずさんだ人も多いと思います。
思わぬ大雪に見舞われました。交通事故等にはくれぐれもご注意ください。
ところで、午年(うまどし)も一月余りが経過しましたね。
乗馬では、乗り手と馬の呼吸がぴったり合うことが大切ですが、これが転じて、人と人とが気が合い、意気投合する事を「馬が合う」と言います。
また、化粧品を選ぶ際にとても大切な基準になりますが、「肌が合う」と言う同じような意味の言葉もあります。
人と人とが考え方や性格が合う時には「肌が合う」と表現します。ちなみに、「肌」は「親分肌」とか「姐御肌」と言われるように性格や気質を意味します。
世の中には実に様々な人がいます。
自分に取って、馬が合う人もいれば、合わない人もいます。
肌が合う人もいれば、合わない人もいます。
馬があったり、肌が合う人が周囲に多ければ多いほど、人生は楽しくなりますが、現実的には結構合わない人もいます。
このような人が、多ければ多いほど、ストレスがたまりそうですね。
「呉越同舟」と言う言葉があります。
現在では、馬が合わない人や、肌が合わない人同士が居合わせる意味でよく使用されますが、本来の意味は、馬が合わない人同士でも、あるいは嫌な人、敵対関係にある人同士でも、イザ!と言う時には互いに協力することです。
中国の春秋時代の話です。「呉」も「越」の国も非常に歴史の在る国ですが、両国は大変仲が悪く、常に戦争に明け暮れていました。
しかし、当時は揚子江を挟んで行き来するには船だけです。
その船に、両者が乗り込んできました。
仲が悪い両者は、最初は睨みあいますが、やがて嵐がやってきました。
不必要に睨み合っている時ではありません。
彼らは窮地を脱するために意気投合し、協力し合い、窮地を乗り越える努力をします。これが「呉越同舟」の本来の意味です。
よく似た言葉に「同州相救う(どうしゅうあいすくう)」と言う言葉があります。
馬が合わない人、肌が合わない人同士でも、危険にさらされるようになれば、協力し合い、助け合うと言う意味です。
世の中には、自分にとって嫌な人は沢山います。プライベートで有れば、避けて通ればよいわけですが、避けて通れないケースも多々あります。
特に仕事関係では避けて通れませんね。
中でも嫌な上司の場合は、問題は深刻です。
このことで悩み苦しんでいる人は非常に多いと思います。
だから、離職したり、鬱になる人が後を絶ちません。
距離を置いてみるのも一つの手ですが、根本的な解決にはなりません。
仕事だと思って我慢する、耐える、給料のうちだと割り切る、時が経過するのをひたすら待つ、諦める方法もありますが感心しません。
しかし、嫌な相手とすぐにでも意気投合する特効薬は存在しません。
そこで、先ず、相手のどこが嫌なのかを考えてみて下さい。
嫌な理由は色々あります。
それに沿った賢い対応が必要になります。
次に、嫌な上司となぜ付き合う必要があるかを考えてみるのもお勧めです。
目的は、嫌な上司とも、立派に仕事を成し遂げることです。
だったら、嫌な事をひとまず棚に置いて、どうすれば今よりよい仕事が出来るかを模索してみるのもお勧めです。
その目的の延長線上で、嫌な上司とどう付き合うかを考えてみるのも手です。
マナーには「何故こうするのか」という合理的な目的が必ず存在します。
従って不必要に形に縛られるより、こうする理由を理解することが大切です。
嫌な上司にも素敵なマナーを発揮される事をお勧めします。