マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
一年で最も寒い時期で、所によっては最低記録が続けざまに出る頃ですが、「立春」を過ぎました。
「立春」の「立」は始まると言う意味ですから、寒い中にも春の兆しが感じられる頃です。
また、暦の上では春が始まる日であり、旧暦では、おぼろげながらも春の兆しが見え始める立春が一年の始まりです。
そして、この日に初めて組んだ水が「若水(わかみず)」と呼ばれ、これを飲むと向う一年間の邪気を払うと共に、五穀豊穣、健康、さらに幸福を叶えてくれると信じられていました。
そして、この水で入れたお茶が「福茶」です。
汲み立ての水で福茶を入れ、感謝の気持ちで味わうのもお勧めです。
作り方は簡単です。
先ず、若水を沸騰させ、梅干しに煎茶やほうじ茶を注げば出来上がりです。
梅干しの代わりに「結び昆布」や「炒った黒豆3粒」でもいいです。
結び昆布が無かったら塩っぺでも良いですし、豆まきをした豆を使用されても手軽にできますので是非どうぞ。
梅は厳寒の中でも百花に先駆けて咲くから、昆布は喜ぶにつながるから、豆はマメ(健康)になるからという理由で、3は縁起の良い数だからです。
いずれも縁起を担ぐわけですね。
さて、冒頭のタイトルですが、「寒さも極まると温かさに転じる」と言うことで、一年で一番寒い今時が、春の始まりだと考えられていたわけで、一年の始まりでもあったわけですね。
年賀状の賀詞に「新春」とか「迎春」のように、「春」の字を使用するのはこの名残です。
これから天気予報などを聞くと、「まだまだ寒いですが、暦の上では春です」などというセリフが頻繁に登場してきますので、その理由を是非話の種にしてみて下さいね。
一番寒くて何をするのもしんどい時だからこそ、一年のスタートの時として、前向きに希望を持ちながら歩んでいく。
その思いは教えられる点が多々あります。
ちなみに、これからも続く寒さの事を「余寒」といい、立春を過ぎたら寒中見舞いから「余寒見舞い」になります。
さらに立春から数えて88日目が「八十八夜」で、210日目が「二百十日」です。
また立春を過ぎて最初に吹く南寄りの強い風が「春一番」です。
七十二候では、「東風凍を解く(とうふうこおりをとく)」とあり、温かい風が吹いてきて、川や池の氷が解け始める頃でもあります。
東風は「こち」と呼ばれ、春を呼ぶ風の事です。
そして東風が吹いてくると、いよいよ梅が咲き始めます。
そして春を呼ぶ風が吹き、明るく、おおらかで、平和で、のどかな情景を表現した言葉が「春うらら」です。
本当に日本に生まれてよかったですね。
「始め良ければ終わり良し」「始め良ければ半ば勝ち」と言われ、何事も最初が肝心です。
身も心も元気でスタートして下さいね。