マナーうんちく話680《冠婚葬祭7、結婚の目的とマナー》
『銭湯を出づる美人や松の内』(子規)
正月の家事の忙しさに振りまわされていた女性が、やっと家事から解放され、のんびりと銭湯に入り、身体の疲れをとり、髪まできれいにして出てきたのでしょうか、その女性はとても美しい人でした。
日本人女性が、着物を着て、畳に正座している姿は凛としていて大変美しい姿ですが、当時、長い黒髪を洗った後の女性のしぐさも、さぞかし色気が漂い美しいかったことでしょうね。
2月4日は立春。
昔は、正月で一年の始まりの頃でもあります。
上記の句は恐らく今頃詠まれた句だと思います。
のどかで平和で色気があって、大変お目出度い俳句ですね。
そこで、これから始まる一年が、お目出度い事に沢山ご縁がある事を願って、慶事の祝儀袋について触れてみます。
御祝い事や御喜び事が有った時に参考にして頂ければ嬉しい限りです。
ちなみに、慶事等において御祝の気持ちとして、あるいはそのお祝いの互助活動に携わって頂いた感謝の気持ちを表すために贈る金品を「祝儀」といいます。
なお、弔事の場合は「不祝儀」といいます。
そして、その祝儀のお金を入れる封を「祝儀袋」と言います。
大正から昭和にかけて機械化による大量生産が可能になり、幅広い用途で一般庶民に普及し現在に至っています。
加えて、祝儀袋の包がほどけないようにするために結ぶものが「水引」で、慶事には紅白や金銀が用いられます。
水引は和紙で「こより」状にしたものを、水ノリにつけて引き、乾かした紙の紐の事です。
のし袋に印刷された物もありますが、水引が掛ったのし袋の方が、格が高くなります。
さらに、水引の結び方には2種ありますので用途に注意して下さい。
ほどいて、再度結ぶ事が出来る「蝶結び」は、入学祝いや長寿の祝いのように何度あっても良い祝い事に使用します。
一方、両方を引っ張るとさらに締まる「結び切り」は、結婚式に使用されます。
結婚は、二人の中をしっかり結びたいと言う意味で結び切りを使用しますのでご注意ください。結婚式も病気見舞いなども、繰り返したら困るので、「もうこれきりよ!」と言う意味もあります。
また、のし袋の右上にあるのし包みの事を「のし(熨斗)」といい、「熨斗鮑(のしあわび)」の略です。
日本では昔から、贈り物には酒肴を添える風習があり、生物を必ず付けたわけですが、それが次第に簡素化され、スルメや熨斗鮑が付けられるようになったわけです。
熨斗鮑は、アワビの内臓をとり、リンゴの皮をむくように薄くむいで、伸ばして、干したものです。
熨斗鮑は古くから神様にお供えしたり、縁起物として重宝されていたわけですが、印刷技術の発達に伴い、印刷された熨斗や、黄色い紙片の代用品で使用されることが多くなりました。
但し、魚介類を贈る際には熨斗はつけません。
なぜなら、熨斗鮑は生臭い匂いがあるので、魚介類にさらに熨斗を付けたら、生臭さが二重になるからです。仏教の弔事では、生物を立ちますので、基本的には弔事に熨斗は使用しません。
表書きの字は、慶事は濃く、弔事は薄く書くのがお勧めです。
そして、祝儀袋にせよ不祝儀袋にせよ、むき出しのままポケットやカバンやバッグに入れないで、袱紗(ふくさ)に入れ、渡す時にはそれなりの口上を述べ、袱紗から袋を取り出し、表書きを相手に向けて、直接両手で、胸の高さ位から渡します。