マナーうんちく話648≪年越し蕎麦のいわれと幸運を呼ぶ食べ方≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

日本には多種多様な年中行事がありますが、古来より続いている行事も有れば、明治以降に欧米から入った行事もあります。
そして、これらが合わさり、多くの日本人が、同じ日に、同じ物を食す日が幾つかあります。

その筆頭が、正月のおせち料理とお雑煮、節分の恵方巻き、夏の土用の鰻、クリスマスのクリスマスケーキ、そして大晦日の「年越し蕎麦」ではないでしょうか?

中でも年越し蕎麦は、江戸時代から続いている風習で、大晦日に家族が揃って蕎麦を食べながら一年を振り返る、とても大切な行事だと思います。

では、何故蕎麦を食べるのか?
うどんではいけないのか?
そこで、地域差はあるものの、年越し蕎麦の由来に触れてみます。
大晦日の夜に「年越し蕎麦」を食べながら、話しの種にして頂ければ幸いです。

年越し蕎麦を頂く理由には、大きく分けて下記の三つが知られています。

○蕎麦のように、細く、長く、幸せに生きたいから。

○一年の悪い縁を切りたいから。
蕎麦はうどんに比べると切り易いので、これにちなんで、今年の悪い縁や災厄を全て断ち切ってしまいたいとの願いを込めています。
このような意味から、年越し蕎麦は「運気そば」とも言われます。

以前、除夜の鐘の「除」は、悪霊を取り除く意味があると申しましたが、まさに除夜の鐘を聞きながら食べる年越し蕎麦には、悪い縁をすべて取り払ってくれる力があるようですね。

○金運に恵まれるため。
これは少し想像しがたい理由ですが、江戸時代はかんざしのような金細工師が活躍した時代で、金細工をする際、飛び散った金粉を回収するのに、練ったそば団子を使用したので、「蕎麦は金を集める」と言われています。だから、食べ残しはよろしく有りませんよ。

江戸時代は世界に例の無い平和な時代が長く続いたわけですが、平和が長く続けば多様な文化が花開きますが、江戸時代になって「濃い口醤油」が発明されてから、食文化が発達し、外食産業が発展しました。

時代劇に登場する江戸の「うどん」や「蕎麦」の屋台もこの頃にはすっかりおなじみになり、庶民に根強い人気が有ったようですね。
特に当時の一般家庭では今のように台所事情が豊かではなく、独身の男性がよく利用したと言われています。今で言う、究極のファーストフードでしょうか。

そして江戸中期になると、生命力が強い蕎麦にあやかり、縁起を担いで「年越し蕎麦」を食べるようになったと言われています。
勿論、喪中に食べても良いと思います。

ところで「蕎麦の旬」をご存知でしょうか?
蕎麦は土壌にこだわらずどこでも栽培できます。しかも2カ月から3カ月位で収穫でき、一年に二回作る事が可能な大変貴重な栄養源です。

「夏蕎麦」と「秋蕎麦」がありますが、秋蕎麦の方が味も色も香りも優れており、その収穫期が晩秋から冬になるわけです。
また、美味しい食べ方は、「挽(ひ)きたて」「打ちたて」「茹でたて」で通にはたまりません。

除夜の鐘を聞きながら、悪い縁を断ちきり新蕎麦の旬の恵みを頂けば、来年は幸運に恵まれるような気がしませんか?

幸運にあやかるために「ネギ」と「海老」を添えて頂ければと思います。
ネギは一年間の苦労をねぎらう意味があり、海老は腰が曲がるまで長生きをするという意味があります。

蕎麦は何かとうんちくが多い食物で日本人になじみが深いわけですが、蕎麦の国内生産量は100%ではなく、8割くらいは輸入に頼っているのが現状です。

それはともかく、大晦日の夜は、このうんちくを参考にしながら「お一人様」も「家族の人」も年越しそばをお楽しみいただき、良い年をお迎え下さい。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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