マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
今日は12月13日。
一年を締めくくり、日本人にとって一番大切なご先祖様が里帰りされるに当たり、その「おもてなし」の準備を始める日です。
何かと慌ただしい時期ですが、今年は和食がユネスコの無形文化遺産に登録された記念すべき年になりましたので、迎春の用意を、昔を振り返りながら古式豊かな歳時記を取り入れながら、要領よく進めるのもお勧めです
新たな年がスタートするに当たり、向こう一年間の五穀豊穣、家内安全をもたらして下さる歳神様のお迎えの準備をするわけですね。
盆と正月、つまり半年に一度、麦や米の収穫に感謝し、豊作を願い、ご先祖様を敬うしきたりは、かなり昔からあったようですが、正月に里帰りされる歳神様は、米の神であり、正月様であり、ご先祖様でもあります。
そして、一番大切なお客様、つまりご先祖様のお迎えや、おもてなしの用意は、先ずは掃除から始まります。これが「正月事始め」で12月13日になります。
今は神様・仏様の国日本では、クリスマスイベントが年中行事の中で一番盛大に執り行われるので、このイベントが済まないうちからの大掃除は考えられませんが、江戸時代には公家も武家も一般庶民も、江戸中全ての人がこの日は大掃除の日だったわけです。
決められた日に決められた事をするのが当時の人の粋な生き方だったわけで、身辺の掃除だけでなく、年神様をお迎えし、おもてなしする神聖な行事の始まりだったようです。
なんだか「お・も・て・な・し」の意味に重みが感じられそうですね。
正月事始めの掃除は、この一年間に家の中にたまった埃や煤を取り払う「煤払い」からです。
汚れを隅々まで取り払うと、ご利益が沢山あると信じられております。
毎年報道されますが神社仏閣では恒例行事になっていますが、一般家庭や職場では、何かと多忙な時期ですから、仏壇や神棚の掃除くらいで良いでしょう。
掃除が終われば、いよいよ神様の里帰りをお迎えする用意に取りかかる事になります。
ちなみに、歳神様はそれぞれの家にお帰りになるわけですが、自分の家がどこにあるか目印が必要です。
その具体的な目印になるのが家の玄関に設けられた門松です。
従って、お迎えする準備で最も大切な準備が門松用の松を山に切りに行くことです。これが「松迎え」で、新年の干支に当たる男性が、新年の恵方、すなわち縁起がいいとされる方向に当たる山から切ります。
次に煤払いをしてきれいにした家の中に、穢れが入ってこないように注連縄(しめなわ)飾りを用意しますが、神社に行くと年中見かける事が出来る紙垂《しで》を付けた縄で、神様に鎮座して頂く神聖な場所づくりです。
つまり、この紙垂がある事により、外部から災難が侵入するのを防ぐわけです。
「注連縄」の「しめ」は「占める」から派生した言葉で、境界線を意味します。
さらに順次触れて行きますが、餅をつき、お節料理を用意して、歳神様を精一杯おもてなしして、トンド祭りと共にお見送りをすることになります。
いずれも今では26日から28日にかけて行うのが一般的です。
オリンピック招致委員会で多くの人のハートを射止め、今年の流行語大賞を獲得した「おもてなし」。
実に美しい言葉ですが、「持て成し」の名詞に「お」がついたものです。
「持て成し」だけでも丁寧な表現ですが、さらにそれに「お」をつけていることからも、いかに日本人がこの言葉を大切にしてきたかが伺えますが、今でも公私とも日常生活で大変良く使用されますね。
英語で表現すればhospitalityでしょうが、非常に幅広い概念があり、必ずしもその意味が、使用する側と、される側に共有されているかどうか解りません。
おもてなしの仕方は、これと言った決まりはありません。また上手下手もあります。大切な事は、「おもてなし」の言葉を使用するにおいては、不必要に対価や見返りを求めず、先人のように、「心を込める」ことだと考えます。