まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
連日の猛暑ですが、さすが8月も半ばになると、朝夕に鳴くヒグラシが小さな秋の訪れを知らせてくれます。
ヒグラシは本来、日暮れに鳴くからヒグラシと名付けられたようですが、朝でも鳴き声は聞こえます。ただ、明るい日中は鳴くことは無いようですね。
そして、間もなくお盆です。
「お盆に関するコラム」は、今まで何回もお付き合いいただきましたが、日本人にとっては大変なじみの深い年中行事です。
再度、お付き合いいただければ嬉しいです。
お盆は、ご先祖様の霊が里帰りされる日です。
何故里帰りされるか?と言えば、「子孫が、つつがなく暮らしているかどうかを確かめるため」だと言われています。
そして、お盆の期間中は、盆踊りや花火を楽しみ、家族と共にひとときを過ごし、再びあの世にお帰りになると言う、日本独特の祖霊信仰に、仏教の思想が加味された意義深い年中行事です。
従って、ご先祖様の霊を丁重に「供養」すると共に、今あるのはご先祖様のお陰と言う気持ちを込めて「感謝」する行事でも有ります。
ところで、以前「薮入り」に触れましたが、昔は今のように高等教育が受けられる人も少なく、しかもかなりの早婚だったので、15歳前後で、働いたり、結婚したりするので、早くから家を出ます。
そして、盆と正月にご先祖様が里帰りするにつけ、嫁ぎ先や勤務先から休暇を頂き実家に帰るわけですが、この休暇はとても貴重な休暇になります。
決して大型連休ではなく、わずか数日ですが、家族・親族・地域の人や幼友達と、有意義なひと時を過ごし、親交を深めるわけです。
昔は、このようにして、絆を深めるシステムが機能していたのですね。
何もかも豊かで便利になり、自由とか個性に価値観が置かれることは、確かに素晴らしいことですが、反面、無縁社会とか孤独死のような由々しきキーワードが生まれる時代でもあります。
いくら豊かになったとはいえ、お盆くらいは、「絆作り」や「感謝」と言う言葉を思い起こすのも良いものですね。
さて、お盆の期間ですが、地域により7月13日から7月16日までと、8月13日から8月16日のところが有ります。これは新暦で行うか、旧暦で行うかの違いです。
明治になり旧暦から新暦に移行しましたが、何分にも当時は、国民の8割以上が農業に携わっていましたので、7月にお盆の行事をとり行えば、農事に忙しく落ち着いて、ご先祖の霊を供養できません。
従って、現在のように農閑期に当たる8月13日から16日にお盆の行事を行えば、落ち着いて供養ができ、家族・親族も水入らずの一時が、楽しく過ごせると言うわけです。
日本は稲作を中心とした農耕文化で栄えた国ですから、殆どの年中行事が、農事と密接な関係が有ったわけです。
また、ご先祖様の霊が、あの世(彼岸)から、この世(此岸)にお帰りになる時は、「早くお会いしたいので急いでお帰り下さい」と言う意味を込めて、キュウリで馬を作ります。
そして、ご先祖様の霊が、この世から、あの世にお帰えるになる時には、「お名残惜しいので、ナスビで作った牛でゆっくりお帰り下さい」と言うことになります。
昔の人が、いかにご先祖様を大切にしたか!が伺われますね。
言い方を変えれば、「お陰様の気持ち」を大切にしたということです。
また、お盆には「ホオズキ」を精霊棚に飾りますが、これはホオズキの赤い果実が、ご先祖様の霊を導くための提灯に見立てているためです。
何から何まで、ご先祖様を「もてなす気持」を大切にしたわけです。
日本人が世界に誇る「おもてなし」の原点は、どうやら、このようにして培われてきた気がしますけど、如何でしょうか?
いつまでも大切にしたいものです。