マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
今日は雨ですから、あまり実感できないかもしれませんが、一年で最も昼が長くて、夜が短い日ですね。
暑さがさらに増し、本格的に夏に至る日、すなわち24節季の一つ「夏至」です。
省エネの一環でしょうか、夜が一番短い日にちなみ、明かりをつけない試みが多くの町で実施されています。スローな夜を楽しみましょうと言うことでしょうか。
ところで、春の彼岸には「ボタモチ」、秋の彼岸には「オハギ」、そして冬至には「ん」の付く字の「カボチャ(ナンキン)」を食べるのはよく知られていますが、夏至はどうでしょうか。
地域のよってまちまちでしょうが、「タコ」が有名です。
その理由は、この頃がちょうど田植え時期ですから、田植えを終えた稲が、タコの足のようにしっかり根付いてほしいからです。
さらに「無花果(イチジク)」を食べる地域もあるようです。
理由は、無花果は長寿の果物だからそうです。
確かに無花果は6月から7月に掛けて出回り、実も葉にも素晴らしい薬効が有るので頷けます。
また、アダムとイブが、最初に身にまとった服とされているのが、無花果の葉といわれているので、相当歴史が古い果物なのでしょうね。
しかし、節分の恵方巻き、バレンタインのチョコレート、夏の土用の鰻、クリスマスのケーキのように、商戦の話題になっていませんので、夏至にタコやイチジクを思い浮かべる人は少ないのではないでしょうか。
日本の二十四節季は、美しい四季の移り変わりを細かく観察したもので、本来は全てが日常生活と深い関係が有ったわけですが、最近では、ビジネスチャンスのテーブルに乗るか否かで、認識度が決まるので、少々残念な気がします。
例えば、衣替えがクールビズに変わったり、冬至にかぼちゃを食べるより、ハロウィンの行事の方が盛大になるのは、日本人として寂しい気がします。
本当に環境に留意するなら、日本の自然の事をより理解すべきだと思うのですが、如何でしょうか?
先人が、長い月日をかけて、自然と仲良く寄り添ってきた行事が、単にビジネスチャンスに繋がらないからという理由で、消えてゆくのは感心できません。
さらに、消え去る行事と共に、消えて行く美しい言葉もあります。
最近では「お陰様」と言う言葉も、あまり聞かなくなりましたね。
先人が築いた美しい言葉が日常の会話から失せて、その代わりに、新しい造語がはびこるようになるのも、時代の流れなのでしょうか?
ちなみに、「お陰様」の「陰」は、目には見えない偉大な人、つまり、神様・仏様の「陰」を意味します。
つまり、日本の宗教観では「ご先祖様」と言うことになりますね。
従って、「ご先祖様のお陰」と言う意味です。
今、私たちが世界屈指の豊かな生活ができているのは、ひとえにご先祖様のお陰だと言うことです。
だから、日本人は、正月とお盆にご馳走を用意して、ご先祖様を自宅にお迎えしたり、お彼岸にはご先祖様が眠っているとされるお墓に、ボタモチやお萩を持参して、お参りするわけです。
良い事が有ったり、運が開けたら、「お陰様で」と言う言葉を発すれば、それを聞いた相手も、とても心地良く思えるものです。
このコラムでも、お彼岸や盆には、ご先祖様に感謝して下さいと申しましたが、実は、盆や彼岸に限った事ではなく、いい事が有る度に、「お陰様」でと感謝の言葉を発して頂ければと思います。
発する方も、聞く方もハッピーになれます。
夏至の夜は、スロー運動でキャンドルナイトを過ごされる方もいるかもしれませんが、「お陰様の心」で、普段の生活に感謝しつつお楽しみください。