マナーうんちく話550≪初鰹と時泥棒≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

《目には青葉 山ほととぎす 初がつお》(山口 素堂)
今年も、鰹のタタキに冷酒が恋しい季節になりました。

今では、殆どの食材が年中市場に出回っていますが、昔は、初モノは鰹に限らず、とても重宝されていたようです。

また、「初モノを食べると75日長生きする」と言って、大変縁起が良い食べ物とされており、色々な初モノが出荷される度に市場が賑わったとか。

初モノ、すなわち旬の物には、大いなる生気がみなぎっているから、それを食すと寿命が延びると考えられていたのでしょうね。

また、江戸時代の死刑囚が死刑を執行されるに当たり、お上から、「何か食べたいものが有るか?」との配慮に対して、死刑囚は季節外れの物を所望したため、その初モノを手にするまで75日間要し、死刑囚は結局、75日生き延びたという説が有ります。

中でも鰹は「勝男」に通じたため、江戸ッ子にとっては、喉から手が出る位、手に入れたいものだったようです。

しかし、初鰹となれば、値段がとても張り、そう簡単には手に入りません。
下級武士の年収に匹敵する位の値が付いたとも言われております。

そこで、どうしたかと言えば、「女房を 質に入れても食べたい 初鰹」となったわけです。

勿論、質屋で人身売買は行われてはおらず、さらに、女房にどれくらい根が付くものかは解りません。

家制度の元、どちらかと言えば男尊女卑的傾向が強かった時代とはいえ、西洋のレディーファーストの文化とは大きな違いが有ります。
まあ、それくらい、初鰹に熱中したと言うことでしょうね。

そして、当時の人が大切にした物の中に「時間」が有ります。
江戸しぐさの一つに「時泥棒」が有ります。

お金は、一生懸命働けば返すことができるが、時間だけは弁済不能です。

またお金は増やすことができるが、時間は、使えば使うほど減少します。

お金は取り返しがつくが、時間は取り返しができません。

だから、時間を大切に使おうと言うわけです。

時間を守ることは最も大切なことです。
約束を守ることは、自分の時間を大切にすることのみならず、相手の大切な時間も使用させて頂くわけですから、事の他大切にしなくてはいけません。

さらに、ひと年重ねると、持ち時間が限られてきます。
だからこそ、一日一日を大切に生きなければいけませんね。

さりとて、不必要に効率を追い求めるのではなく、スローでも充実した時を過ごすことが必要だと考えます。

「生き方上手」と言われる人は、自分も、相手の時間の使い方も上手な人なのでしょうね。

訪問する時は予約を入れる、約束は守る、遅刻をしない等を徹底して時間泥棒にならないようにしたいものです。

特に電話は、相手の貴重な時間の中に、予告なしに突然入っていくわけですから、電話をかけた時「今いいですか?」の一言は、ぜひ発したいものですね。

さらに、人に待って頂く場合は、「少々お待ち下さい」とか「しばらくお待ちください」という曖昧ないい方ではなく、「20分位お待ちください」とか「5時間位お待ちいただけますか?」等と、なるべく具体的な数値を発信する事が大切です。

「時が立つのが早く感じるようになったら年を取った証拠」と言われますが、常に前向きで、新しいものに挑戦している時は、時間はゆっくりと流れているそうです。




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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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