マナーうんちく話543≪小利をみれば、即ち大事にならず≫
春先に蒔いた種が芽を出し始めました。
そして、これから必要に応じて水や肥料を施すわけですが、肥料の事を「肥やし」と言うのをご存知でしょうか?
単に「肥(こえ)」と言う場合もあります。
肥えるとは、「人や動物の肉付きが良くなる」「土地が豊かになる」「経験を積んで物ごとの良い・悪い、の判断能力が向上する」等の意味が有ります。重が増加した事を「肥えた」とか、痩せた土地に肥料を蒔いて土地を「肥やす」とか、目や口が「肥える」等と表現します。
江戸しぐさの要ともなる言葉に「お心肥やし」があります。
「おこころこやし」とか「おしんこやし」と読みますが、要は食べ過ぎて身体を肥やすのではなくて、しっかり勉強して心を肥やす、つまり心豊かであれと言うことです。
そういえば、今からちょうど半世紀位前の事でしょうか、大学の卒業式で、「太った豚になるより痩せたソクラテスになれ」と、学長が卒業生に贈った花向けの言葉が話題になりました。当時の日本は、経済の発展期で、食べ物事情も、それほど豊かでは無かったですが、それでも、この訓示は重みが感じられました。
今はどうでしょうか?
今の日本は、食料自給率が先進国中最下位でありながら、世界屈指の「飽食の国」「美食の国」と言われ、贅沢な食べ物が、腹いっぱい食べられる国になりました。それ自体は嬉しいことですが、食べ過ぎ、飲み過ぎによる生活習慣病の増大で、多くの矛盾が発生しています。つまり、物質的には豊かな食事を謳歌しているけど、決して賢い食事ではないと言うことではないでしょうか?また心を通わせて食べることが下手だということでしょうか?
「お心肥やし」は、身体を肥やすのではなく、心を肥やせと説いております。
「しっかり勉強して、学問に精を出せ」といっておりますが、今のように知識だけを詰め込むのではなく、実際に色々な事を体験して、自分で考えて行動することも大事だと教えています。
平たく言えば、知識も深め、人格も磨きなさいと言うことですね。
まさに、「江戸しぐさ」の基本理念である、他者に対する思いやりの心が目覚めるような教えが行われていたと感じます。
人間幾つ歳を重ねても常に勉強することは必要です。
勉強して多様な知識をつけ、心を豊かにして、そして社会のためになる人間になるのが、江戸ッ子としての粋な生き方だったようですね。
今「地域づくり」が旬の話題になっていますが、ハードの充実だけでは地域は幸せになれないということを歴史が証明しました。地域づくりの原点はまさに「人づくり」にあると言えるかもしれませんね。
しかし、人づくりに携わる側の親や教師、指導的立場の人が心が肥えていなければいけませんね。
そして、心を肥やすにはマナーに精通することが一番です。
そこで、「ハッピーライフ創造塾」では、「躾に役立マナー」、「生活習慣のマナー」「人間関係のマナー」「社会生活のマナー」さらに家族や地域の絆を深める「冠婚葬祭のマナー」等を積極的に展開していく予定です。
特に食事に関するマナーは、より良く生きて行くことに直結するマナーですので、食事を伴いながらの実践的マナーを各地域で、公民館・ホテル・諸団体等とタイアップしながら開催する予定です。ご期待下さい。