マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
4月5日は二十四節季の一つ「清明(せいめい)」です。
漢字が表すように、春になって全てが明るく、生き生きと輝く頃です。
赤色・黄色・青色の花が咲き乱れ、鳥たちがさえずり、優しい風が吹いてくる頃で、一年で最も美しく、過ごしやすい時ですね。
前回に引き続き「縁作り」のお話しですが、今回は「柳生家家訓」の紹介です。
「少才は、縁に出会って縁に気付かず。
中才は、縁に気付いて縁を生かさず。
大才は、袖触れ合う他生の縁もこれを活かす。」
「少才」とは、才能が少ない人、つまり実力が無い人は、目の前にすばらしい縁が有りながら、それに気が付くことさえできない人です。
ちょっと寂しい気がしますね。
「中才」とは、まあ普通の人です。つまり、目の前にすばらしい縁が有ることには気がつくが、その縁を有効に生かすだけの実力が無い人です。
そして、「大才」とは、いわゆる実力者の事で、ほんのわずかな縁でも、それを巧みに取り入れ有効に生かし、心豊かな生活を可能にする人物です。
平たく言えば、賢くない人は縁に無頓着だが、賢い人は縁にとても敏感で、袖が触れあう程度の些細な縁でも、それを活かし成功を収める事が出来ると言う意味です。
「縁=チャンス」と捉えて頂いてもOKです。
前回は、「縁を大切にして下さい」と言うお話でしたが、今回は「縁をモノにして下さい」と言うことです。
具体的には、「待ち」とか「受け身」ではなく、自分から積極的に働き掛けることだと言うことです。
挨拶しかりです。
すでに何度も「先手必勝の挨拶」の話をしましたが、挨拶をされたら自分もする、ではなく、相手に気が付いたら、積極的に明るい挨拶をすることです。
挨拶や季節の便り等は、ビジネスやプライベートシーンに積極的に取り入れて下さいね。
但し、あまり自分を売り込む姿勢をあらわにしないで、むしろ相手をしっかり理解する態度が大切です。
さらに、あまり見返りは期待しないようにして下さい。
つまり、こういった事は損得勘定ではありません。
相手に好感を与えると言った謙虚な気持ちが大切です。
ビジネスの場合だったら、それに数字が自然についてくると思いますよ。
これから学校や職場で新たなスタートを切った人はどうぞ、挨拶からだけでも実践してみて下さい。先ずは、目の前にいる人に気軽に声を発してみることです。そして、会話が生じたら、聞き役に回ることです。
家庭、地域、学校、職場、そして社会。
全ては人と人とが集まって成り立っています。
ここで成功するには、いかにして良好な人間関係が築けるかではないでしょうか?
私は、長年接客業の第一線におりながら、気が付くのが少し遅かった気がしますが、最高の才能とは、「人と人との縁」をいかに上手にモノにするかだと思います。
時代背景は今と全く異なりますが、徳川家康、秀忠、家光の3代に渡り、剣術指南役として仕え、徳川300年の太平の世を築くに当たり、少なからず貢献した剣豪の言葉には重みが有ります。現代人も大いに参考にすべきです、
ところで、中国では四季を、それぞれ色で表現しました。
夏は赤、秋は白、冬は黒といった具合です。
そして春は青で、青い春、つまり「青春」と言う言葉はそこから派生していますが、まさに「清明」の頃です。
家庭や学校や地域や職場で、良好な人間関係を築き、幾つ歳を重ねても、心は常に青春でいたいものですね。